文春オンライン

「小池都知事が発表する数字には嘘がある」田中良・杉並区長が“医療崩壊”の現場から怒りの告発

大量の自宅待機者の実態が闇に隠されている

2020/04/16

 連日、うなぎ登りに増える新型コロナウイルスの感染者数。群を抜いて多いのは東京都だ。4月14日までに2319人が陽性となった。しかし、そこには隠された「実態」がある。そう指摘するのは田中良・杉並区長だ。

 杉並区は同日までの感染者数が125人と、東京23区で4番目に多い。このため、区内の感染者用の病床が埋まってしまい、陽性と分かっても一度も病院に収容されない患者が30人を数える事態となった。救急にも支障を来すようになり、ついに医療崩壊が始まる瀬戸際にまで追い詰められた。

現場の病院や開業医の苦労を切々と訴える田中良区長(杉並区役所)

 医療政策は区ではなく、国や都の仕事だ。しかし、小池百合子・東京都知事は、医療現場の崩壊に対処できていない。見かねた杉並区は13日、約25億円をかけてウイルス対策用の病床を増やすなどの独自策を打ち出した。ところが、都が正確な情報を明らかにしないために、区の対策が翻弄されている面があるのだという。いったい、どういうことなのか。田中区長に緊急インタビューをした。

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あっという間に病床が埋まってしまった

――ウイルス検査で陽性になっても、自宅待機とされる人が増えているのですか。

田中 杉並区で最初に陽性者が見つかったのは2月でした。この時はすぐに収束し、以後の検査でも陰性の人ばかりでした。様相が一変したのは3月19日です。数名の陽性者が出て、以後はどんどん増えていきました。区内の新型コロナウイルス対策用の病床は、民間の2病院に4床しかありませんでした。そこで2病院が約20床まで増やしたのですが、感染拡大のスピードの方が早く、あっという間に病床が埋まりました。現在、約30人が自宅待機とされています。

――杉並区だけの現象ですか。

田中 いえ、私が入手した他区の情報では、杉並より多くの待機者が発生している区があります。全体の動向からも推計すると、23区全体ではどんなに少なく見積もっても200人程度が自宅待機になっているのではないかとみています。こうした数字を“推計”するしかないところに、大きな問題があるのです。

臨時休業の店舗(杉並区阿佐谷)

都が発表している数字に「自宅待機者」はいない

――そうした実態は明らかになっていません。

田中 都の発表では自宅待機者が「いない」のです。例えば4月13日時点で、都内の陽性者数は2158人でした。うち入院中が2064人、死亡が42人、退院が52人とされています。どこにも「自宅待機者」はいません。

 都はウイルス対策用の病床を2000床確保したとしています。4月7日からは、208室のホテルを丸ごと借りて、約100人とも言われる軽症者を病院から移しました。ならば、入院中とされている2064人は全員収容できる計算です。にもかかわらず、大量の自宅待機者が発生しています。数字に嘘があり、実態が闇に隠されているのです。