コロナ禍のなか、定食チェーン「大戸屋ごはん処」などを展開する大戸屋ホールディングス(窪田健一社長)が揺れている。6月の株主総会で、筆頭株主で焼肉店「牛角」などを運営するコロワイド(蔵人[くろうど]金男会長)が経営陣刷新を提案し、子会社化を目指すと4月14日に発表したのだ。
「2019年2月から既存店の売上が前年割れを続ける大戸屋の経営陣に、コロワイドの蔵人会長がノーをつきつけた。株主総会に向けて委任状争奪戦に発展するでしょう」(大手証券幹部)
騒動の発端は、大戸屋を実質的に創業した三森(みつもり)久実会長(当時)が57歳で死去した15年7月に遡る。
「久実氏は池袋の食堂だった大戸屋を400店舗以上のチェーンにした。その後継をめぐり、久実氏の従兄弟にあたる窪田社長ら経営陣と、久実氏の妻の三枝子氏と息子で常務だった智仁氏が対立したのです」(同前)
15年9月、三枝子氏らが社長室を訪れ、机に遺骨や遺影を置き、窪田氏に「社長として不適格なので、智仁にやらせる」と迫った。
「智仁氏は大戸屋のメインバンクである三菱UFJ信託銀行に新卒で入社し、銀行員を2年務めました。ただ、智仁氏は当時26歳と若く、同行も大戸屋経営陣も後継者とすることに難色を示した」(信託銀行幹部)
お家騒動が続いたが、16年に智仁氏が去り、翌年に大戸屋が久実氏の功労金として創業家に2億円を支払い、収束したかに見えた。
ところが――。昨年10月、創業家は保有していた株式18.67%をコロワイドに30億円で譲渡したのだ。