新型コロナウイルスの感染拡大の中、支持率をV字回復させているのがドイツのメルケル首相(65)だ。
一時は、2021年の任期満了まで首相を務められるか疑問視されていた彼女だが、公共放送ARDの世論調査で政権支持率は7ポイント上昇、メルケルへの支持は64%と近年の最高値を記録している。
コロナ感染でスペイン、イタリア、フランスなどは死者が2万人を超えるのに対し、ドイツは5000人と格段に少ない数字に抑えている。だが何より信頼回復に至った最大の要因は、彼女が発した言葉の力だった。
地味で慎重な物言いは一貫し、現在も自国の感染状況に一喜一憂しないよう国民に呼びかけている。
量子化学の博士号をもち、研究者だった彼女による感染拡大のメカニズムについての説明は非常に的確で、世界中でわかりやすいと話題となった。
「現在の感染拡大のペースは横ばいだが、感染者1人が1人にうつす計算です。それが1.1になると10月に、1.2になると7月に、1.3人になれば6月に我々の医療体制は崩壊を迎えます。現状は極めて脆い成功でしかないのです」(4月15日の会見)
コロナ拡大が始まりつつあった3月11日の会見では、国民に対し、「最大7割の国民が感染すると考えるべきです」という厳しい現実を突きつけた。