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わたしの「神回」

セガサターンの名作『ガングリフォン』はなぜ未来を予見できたのか

セガサターンの名作『ガングリフォン』はなぜ未来を予見できたのか

ロシアのウクライナ侵攻、オバマ演説……「神回」は現実化した

2020/05/08
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 砂漠化したウクライナの穀倉地帯を進む日本外人部隊の90式戦車改。だが、ドイツのレオパルド3の装甲を貫けず、次々と撃破されていく。戦闘後、「90式はブリキ缶だぜ」とレオパルド3の戦車兵達は余裕の会話をしているが、ふと上空を見上げると――。

 これが今回、「神回」として取り上げるセガサターン向け3Dシューティングゲーム、『ガングリフォン』(ゲームアーツ、1996年)のステージ1「ハリコフ降下作戦」を映像化したオープニングムービーである。当時としては高クオリティのCGムービーで、その演出の格好良さと相まって評判を呼んだ。中学生だった筆者は何度見返したか分からないし、今もたまに見返している。

「サタコレ」として復刻された『ガングリフォン』

リアル寄りの世界設定

 ガングリフォンの舞台は架空の西暦2015年。世界はヨーロッパ各国・ロシアからなる汎ヨーロッパ連合(PEU)、アメリカを中心としたアメリカ自由貿易地域(AFTA)、中国中心のアジア太平洋共同体(APC)、アフリカ統一機構(OAU)の4極に分裂している。そして、アフリカ市場をめぐってAPCとPEUによる第三次世界大戦が北アフリカで勃発した。

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 この世界ではアメリカは世界の警察官であることをやめ、南北アメリカ外には不干渉という孤立主義に転じており、日米同盟は解消されている。日本は軍事・経済で圧倒的な中国に屈し、APC加盟、そして中国の圧力による憲法9条改正(!)を行い、海外に展開する軍事力として日本外人部隊を創設した。プレイヤーは日本外人部隊第501機動対戦車中隊に所属するパイロットとして、この戦争を戦い抜く。

 これがガングリフォンの基本的な世界設定である。未来要素として、1990年代に現用だった兵器に加え、2脚あるいは多脚兵器(AWGS)が実用化・配備されている。プレイヤーは、三菱重工とマクダネル・ダグラスが合併して生まれた多国籍企業、マクダネル・ダグラス・三菱(MDM)が開発した飛行能力を有する2脚兵器『12式装甲歩行戦闘車』(HIGH-MACS)を操縦し、戦闘に身を投じることになる。