「息子は就職することもかなわず、ずっと自宅やリハビリ施設での療養生活を余儀なくされています。しかし、大学側は真摯に事故原因を究明することもなく、『こちらに責任はない』と言い切った。『ふざけるな!』という気持ちでいっぱいです」(Aさんの父)
2018年にアメフト部が“悪質タックル問題”を起こした日本大学。前年にもプロレスサークル内で、悲惨な事故が発生していた。
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Aさん(24)が日大のプロレス研究会「NUWA」に入ったのは15年春。当時、Aさんは別の私立大学の2年生だった。
「プロレスが昔から好きで、インターネットでたまたまNUWAのホームページを見つけたんです。『他大学も歓迎』とあったので、入会しました」(Aさん)
それから週に2回ほど、日大法学部6号館で開かれる練習に参加していたAさん。4年生で就職活動真っ最中だった17年8月1日の練習中に、事故は起きた。
「AくんはXに、『次の試合でバックドロップを掛けられるように』と言い渡され、練習をすることになりました。技をかける相手役は新人のY。Xの高校時代の後輩で、がっちりとした体格でしたが、試合は未経験でした」(研究会関係者)
当時、AさんはXからイジメに遭っていたという。
「Xは練習中にAくんの脛を叩いたり、食費を出させたりしていました。Aくんを研究会に残らせるために『留年しろ』と脅かすことも。授業があるため練習への参加を断ったAくんに、しつこく『出てこい』と連絡していました」(同前)
バックドロップは相手の背後から脇に頭を潜り込ませ、一気に後方に反り投げる、プロでも危険な技だ。
身長166センチ、体重63キロと小柄なAさんは、あまり運動が得意ではなく、それまで主に“お笑い試合”に出場しているようなメンバーだった。Xの指示にAさんは困惑した。