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source : 週刊文春 2020年5月7・14日号

genre : ニュース, 社会, 教育

思い切り後方に投げ飛ばされたAさんは……

「Aくんが完全に上半身をフリーに投げられる技を受けるのは初めて。周囲のメンバーは『大丈夫かよ』と心配していました」(同前)

 技を3度かけられ、4度目の直前、XはYに「見栄えが悪い。振りぬく感じが足りない」と指示。それに従ったYは、Aさんを思い切り後方に投げ飛ばした。

 Aさんが振り返る。

「すぐに首が脱臼したのが分かり、痛みがすごかった。救急車が来て、担架で運ばれている最中に酸素マスクを付けられたけど、急に息苦しくなって……。このまま死んでしまうのかなと」

 Aさんに下された診断は頸髄損傷の重傷。緊急手術が施され、何とか一命は取り留めたが、今も首から下が自力で動かせない全身不随の状態となった。

全身不随で車椅子生活となったAさん

 Aさんの父はこう憤る。

「その後、周囲の助けもあって大学は卒業できましたが、息子の身体は元に戻りません。事故についての調査と見解を日大側に求めましたが、『サークル活動中に起こった不慮の事故』との見解を口頭で告げられただけで、まともに取り合ってもらえませんでした。Yは一度見舞いに来ましたが、Xから謝罪はありません」

練習中に「首から落ちろ、首から!」

 Aさんのスマホには1本の動画が残されていた。事故の約3カ月前の練習中に撮影されたもので、次のようなシーンが映っていた。

 マット上で何度か受け身を取ったAさんが再びマットの上に立つ。バン!という受け身の音が響き渡る。

X「もっとだよ。腰上げろ! お前、3年間サボってきたから、これだよ」

 バン! マット上で再び受け身を取るAさん。

X「まだだよ。首から落ちろ、首から! 首から落ちるんだよ! 落ちても大丈夫だろ? 首から首から!」

 周囲で「えへへへ」と笑い声が起きる――。