「相続税で財産の55%を国に持っていかれてしまう」
A子さんは早速執筆にとりかかった。
「この自伝本は、音楽プロデューサーとしての松浦さんだけでなく、夫として、父親として、一人の人間としての松浦勝人を描き、将来お子様が読んだときに『お父さんかっこいい』と思える一冊にしようと方針を固めました。だから離婚を決めた理由を本の冒頭に持ってきて、松浦さんがお子様方へ語りかけているようにまとめたんです」
A子《例えば社長が死んだ後、社長のお子さんがお父さんのことを一生誇れるような、愛を感じていられるような本にしたい》(松浦氏・A子さんのLINEより 2016年12月7日午前2時30分)
松浦《いい感じだね。先が読みたい》(松浦氏・A子さんのLINEより 2016年12月7日午前3時44分)
A子さんは取材依頼の2日後には、約3500文字の冒頭部分を書き上げた。以下の●●は松浦氏の子供たちの実名である。
〈●●、●●、●●へ
僕は、世間から見ると「愛情のない父親」と映るのかもしれない。
もしかすると、お前たちにもそう思われているのかもしれない。
(中略)
でも、僕が自信を持って言えること。それは、格好つけているように聞こえるかもしれないけど「お前たちをしっかり愛している」ということだ。
(中略)
たとえば結婚している状態で僕が先に死ぬとする。そうすると、相続税で財産の55%を国に持っていかれてしまう。僕の場合そのほとんどが会社の株式だ。当然株を売らなければ相続税は払えない。会社の株価にも影響し、多くの株主の皆様にも迷惑をかける。しかし、売らなければ相続税は払えない。そして、僕が死んだ時とお前たちが株を売るときの株価の差額がマイナスに発生すれば売ったところで相続税が払えないかもしれない。お前たちはたちまち路頭に迷うことになる。その心配をなくすには今離婚するしかない、そう思った。〉(松浦氏の自伝本原稿より)
見城氏からA子さんへ「凄いよ、君は」
「この原稿を箕輪さんに送るとすぐに感想をいただき、なんと見城さんからもメールで直々にほめていただいたんです。絶対に良い本にしようと決意しました」
見城氏から届いたメールには、A子さんを絶賛する言葉が連なっている。
《松浦のことを君が書けば必然的に文学的になるでしょう。ですから、文学的ということは頭から外して駆け抜けて下さい。ワクワクします。君の中で野太いエネルギーと明晰さと繊細さが絡まりながらスウィングしています。書かざるを得ないマグマが君の中で渦巻いています。凄いよ、君は。》(2016年12月12日)
しかしこの離婚は “税逃れのための偽装離婚”と指摘される可能性もある。自伝本刊行を決めた松浦氏自身も、それは自覚していたようだ。録音データには松浦氏のこんな発言が残されている。