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2020/06/01

睡眠について専門家は「10%もわかっていませんね」

 不眠がどん底の状態にあるときは、コーヒーやアルコール、炭酸飲料や香辛料の入った料理には決して手を出さず、修行僧のごとく禁欲的に過ごした。少しでも眠れなくなる要素を取り除こうという努力だ。

 結局、内科や精神科、胃腸科などを巡り、寝る前にベンゾジアゼピン系の睡眠薬と2種類の向精神剤、それに逆流性食道炎を抑える胃薬を飲むことで、ごまかしつつ日々を過ごしてきた。

 これまで睡眠に関する情報は何でも貪欲に吸収してきた。睡眠に関する雑誌の特集や本など、何でも飛びついた。

 だが、それらの情報は、頑固な不眠を抱える私には何の役にも立たなかった。

「週刊文春」17年11月9日号で、私が取材した際、スタンフォード大学で睡眠学を研究する西野精治教授は、睡眠について解明できているのは「10%もわかっていませんね。せいぜい5%ぐらいかな」と語った。

 その説明に納得すると同時に、それなら、この先、一生、私の不眠の原因が突き止められなくても仕方がないな、と諦めていた。

「睡眠時無呼吸症候群の疑いが濃厚ですね」

 ところが、転機は意外なところから訪れたのだ。

 今年9月、最寄り駅の駅ビルに睡眠クリニックができているのを見つけ、さして期待を抱かず行ってみた。

Sleep Rest Clinic 幕張の岩根院長

 今年6月に千葉市美浜区で開業した「スリープレストクリニック幕張」院長の岩根隆太医師(44)は、問診を始めるや否や、「睡眠時無呼吸症候群の疑いが濃厚ですね」と言い放った。

 私は心の中で、「ホントかな」と懐疑的だった。

 実は睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)については、2016年春に千葉大学医学部附属病院の総合診療科で診てもらったことがあった。そこの謳い文句は「診断のついていない症候や健康問題を有する患者さんの診療を行っています」というもの。

 そこで、通っていた精神科医に「SASの疑いがあるので診察してほしい」と紹介状を書いてもらい、1カ月以上待ち、診察日を迎えた。家人が録音した、私のいびきの音源も持参した。

 だが、医師から「SASは、あなたよりもっと太った男性が罹る病気ですから、心配はありません」と問診だけで一蹴された。

 当時の体重は70キロ前後で、身長は169センチ。体格指数(BMI)は24台で、ぎりぎり普通体重に収まっていた。

 以来、私の中では、SASという選択肢は消えていた。

 ところが、岩根医師は、SASの可能性があるとの見立てを変えない。

「横田さんは顎が細い。また、SASが逆流性食道炎の原因かもしれません。睡眠時の無呼吸中に吸気努力が起こって、食道の内圧が低下します。その結果、食道内圧が大きく変動することで、胃の内容物が食道へと逆流しやすくなるのです」