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2020/06/01

長年、私を苦しめてきた“犯人”を捕まえた

 眼球が動かないノンレム睡眠では、睡眠の深浅ごとにN1(浅い睡眠)、N2(中程度の睡眠)、N3(深い睡眠)の3つに分かれる。理想の割合は、N1が25%で、N2が50%、N3が25%となる。

 精密検査の結果、私の場合、N1とN2がほとんどを占め、深い睡眠であるN3が全体の1%にも満たなかった。時間にして一晩に5分足らず。無呼吸低呼吸に陥るたびに、眠りが浅くなった結果だ。

 この数字を見て、膝を打った。これまで「眠気が残る」や「熟睡した感じがしない」といくら言っても、周囲に伝わらなかったもやもやとした気持ちが、明確な数字になって表れ、ガッツポーズが出そうなぐらい嬉しくなった。

無呼吸検査の結果

 同時に、ようやく、長年、私を苦しめてきた“犯人”を、この手で捕まえた気分になった。

治療法はあるのか?

 岩根医師は、深睡眠が1%以下という数字は「脳と体が休まる時間がほとんどなく、男性ホルモンや成長ホルモンなどのホルモンバランスがくずれ、さまざまな病気が生じやすい状態です」と解説する。

 さまざまな病気とは、高血圧症や狭心症・心筋梗塞、慢性心不全、脳卒中、糖尿病、認知症、うつ病などである。夜間の突然死の割合は、健康な人と比べると、約2.5倍に跳ね上がる。

 SASは、他人の生命も危険にさらす。罹ると集中力が低下するため、通常の人に比べ交通事故の割合が7倍にも増える。

 また、SASが原因だったと考えられる世界的な事故には、1979年の米スリーマイル島原子力発電所事故や、86年のスペースシャトル「チャレンジャー号」爆発事故があり、日本国内では、2003年のJR山陽新幹線の居眠り運転などがある。

 では、どう治療するのか。マウスピースを付ける方法や、扁桃摘出手術などもあるが、メインはCPAP(シーパップ)(持続陽圧呼吸療法)となる。

睡眠時無呼吸症候群を治療するCPAP

 CPAP治療とは、寝るとき、縦横高さが20センチ程の機械から、鼻に装着したマスクを通して圧力を加えた空気を喉に送り込む。これによって気道を広げ、空気の通り道を確保する。この治療が保険適用となるのは、1時間当たりの無呼吸低呼吸の回数が20回以上であることが条件だ。

 私は、精密検査の結果を聞いた日からCPAPを持ち帰り、ほぼ毎晩付けて眠った。初日の10月7日は、夜の11時前に眠り、翌朝7時20分に起床した。これほど熟睡したことはほとんどなかった。

 その日は夜7時まで仕事を続け、夕食後にCPAPを付けたまま、本を読んでいるうちに、夜10時過ぎに寝落ちして、翌朝7時42分に起床している。

 CPAPを付けるようになってから、日常生活が劇的に変わった。体に括り付けてあった重しが外れたような解放感があった。