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「おカネは彼らが持って行きました」元慰安婦支援団体内紛、日本への影響

2020/05/28

 尹美香・日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連。日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶財団と挺対協が統合)前理事長がいよいよ追い詰められている。周知のとおり、寄付金などを巡り数々の疑惑が浮上し、支援団体とともにあっけなくその“聖域”は崩れ落ちた。

 この内紛騒ぎに、日本では“高みの見物”のような話もでているが、この嵐の後には、元慰安婦支援運動はむしろ、より堅固になる可能性もある。 

尹美香・日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)前理事長 ©共同通信社

「おカネは彼らが持って行きました」 元慰安婦の訴え

「私は30年間(熊の曲芸に例えて)芸をして、おカネは彼らが持って行きました」 

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「尹美香は私利私欲を満たすために慰安婦を利用して、国会議員になったのです」 

 5月25日、2回目の記者会見で元慰安婦の李容洙さん(91歳)は語気を強めた。 

 疑惑を引き出すきっかけとなったのは5月7日に行った最初の記者会見だ。李さんはこの席で初めて、「尹前理事長に利用されるだけ利用されてきた」と吐露し、「寄付金の使途が不明であること」、そして日韓慰安婦合意を巡っては「尹前理事長は事前に知っていたのにその事実を慰安婦に伝えなかった」とし、「問題が解決されていないのになぜ国会議員になるのか」と訴えた。 

5月25日の記者会見での李容洙さん(著者提供)

 当事者からの告発に韓国社会も騒然となったが、記者会見を仕掛けた人が別にいると黒幕説も流れるなど、タブー視されていた尹前理事長や正義連だけに、事態はそう簡単には動かないだろうと思われた。

 当の尹前理事長もそう思っていたのだろう。この記者会見後、「(李ハルモニは高齢なため)記憶違いをしている」とこともなげに一蹴している。 

「ハルモニも知らなかった不正疑惑が数え切れないほど」

 ところが、その後、尹前理事長と正義連に資金を巡る不正疑惑が次々と噴き出した。募金に際し、尹前理事長の個人口座が使われていたことや、補助金や募金、寄付金などの不透明な会計処理や不正流用などがあり、国の補助金、数億ウォン(数千万円)を受け取っていないことになっていたことも発覚した。李さんに近しい人物は言う。 

「一度の記者会見のはずが、李ハルモニも知らなかった不正疑惑が数え切れないほどでてきて、ハルモニは混乱してしまったようです。これほどまでとは思っていなかったのではないでしょうか。 

 2012年に李さんが比例で国会議員選挙に出馬しようとした時に、問題も解決していないのにと出馬を強く止めたのが、他でもない尹前理事長でした。その時の言葉は醜かった。それなのに、本人は、慰安婦問題が解決もしていないうちに出馬し国会議員になろうとしている。今まで耐えてきたぶん、裏切られた思いが強かったのだと思います」