昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載近田春夫の考えるヒット

いい仕事してるなあ……尺八、三味線もこなす17歳「彩青」の魅力――近田春夫の考えるヒット

2020/06/03

『津軽三味線ひとり』(彩青)/『時空の迷い人』(デーモン閣下×宝野アリカ)

絵=安斎 肇

 彩青の新曲を聴き終え、思わず脳裏に浮かんだのが、ジャンル問わずシングル盤の評価をするときに、よく昔から用いられている「コンパクトにまとまった」という“いい回し”であった。

津軽三味線ひとり旅/彩青(りゅうせい)(日本コロムビア)細川たかしに師事して昨年デビュー。尺八、三味線もこなす17歳。

 最小限の要素で組み立てられていながら何ら不足がない、その合理性こそが楽曲の魅力の中枢を成す、ぐらいのニュアンスなのだろうとも思うが、無駄のない作りは、やはり聴いていても小気味いい。

 ちなみに、曲調自体は、松村和子『帰ってこいよ』以来といってもいい、三味線もの(蛇足ながらそのそもそものルーツはこまどり姉妹である)の流れを汲むものだった。

 楽器を弾きながら歌うひとの佇まいには、ただ歌うのみの姿とはまた別の味わい/趣のあるものだ。殊に――フォーク系によく見受けられるような、適当にコードストロークなどをこなすスタイルではなく――堂々“リード楽器のプレイヤー”としての腕前を披露して見せてくれる歌い手は、存在も稀なゆえに、印象に残ることが少なくない。

 古くは、超レアなエレキギター(ナショナルというメーカーです)を独特のポジションに構え『島育ち』を歌う田端義夫、二十一世紀的には長山洋子か。洋楽で申せば例えばジミ・ヘンドリクスetc……そうした人たちならではのパフォーマンスの見どころはといえば、歌唱と演奏の“有機的なつながりの妙”に尽きる。

 この『津軽三味線ひとり旅』でも、醍醐味というか惹かれるのは、やはりそうした部分での一体感である。幸い、検索すればプロモーション用の動画が観られる。要所要所の“必要最低限”のバチさばきカットではあるが、この、本人演奏のシーンなかりせば、彩青の表現者としての訴求力も随分違ってくるとは思うので、そこはひとつ! 是非想像力などたくましくして映像チェックをしていただきたい。

 ところで、この“三味線の絡み方が必要最低限”というのも、文脈的には、冒頭語った“コンパクト”の範疇の話だろう。そして、かかる文脈とは、私のなかでは結局、編曲/構成にまつわる技術論になるのだけれど……云々と、長々マクラをふってしまって申し訳ない。要するにこの新曲、アレンジの良さが際立っているのである。

 いい換えるならば、「いい仕事をしているなぁ」。

 具体的には、先ずイントロだ。始まった途端ワクワクさせるものがあり、程よい尺で、高揚感を高めると、ストンと歌にバトンタッチしては、聴き手の気持ちを歌詞世界に自然と向けさせてしまう。或いは、歌なかのバックのストリングスの、歌い手の心情への積極的な寄り添い。ロックでもないポップスでもない、演歌ならではのエイトビートの心地よさを教えてくれるリズムセクションなどなど……。これぞ手練れの職人ならではの見事なスコアなのである。

時空の迷い人/デーモン閣下×宝野アリカ(FlyingDog)TVアニメ『八男って、それはないでしょう!』OP。「悪魔と闇の女王の競演」とのこと。

 デーモン閣下×宝野アリカ。

 これもまた違うベクトルだが、とにかくアレンジに耳がいってしまった。 

今週の密「コロナ問題でパチンコ店の営業自粛の是非について、ひところみんな盛り上がっていたよね。そこで最近気が付いたんだけどさ、テレビで店の前の行列の映像はよく見たけど、景品交換所に並んでいる行列の映像は出てこなかったよね」と近田春夫氏。「まさにお金が各方面に動いているホットスポットだけに、どうしてなのかなって気になるじゃん?」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

この記事の写真(3枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー