文春オンライン

根拠なく「緊急事態宣言は要らんかったんや」と言い出す知識人が増えている問題

専門性のある議論は、感染症の研究者や医師に任せましょう

2020/05/29
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 緊急事態宣言が解除されました。

 このままコロナウイルスが終息してくれることを期待しつつ、夏場から年末に向けての第二波を警戒するのは、我が国の医療システムを守り、大事な人たちの生命を危険に晒さないようにするための責務だと痛感します。

本当の意味で日本社会を担ってきた人たち

 一方で、感染症対策に伴う緊急事態宣言は大規模な休業を強い、飲食店、ライブハウスから農家・漁業など一次産業従事者まで多大な収益ロスを生むことになりました。ホワイトカラーのようにリモートワークで通勤から解放される人も出た一方、生活に必要な小売業、電力や鉄道、ガス、上下水道などインフラ事業に従事される方や、各種対応に追われる公務員の皆さん、そして何より感染症対策の最前線を担った医師、看護師など医療関係者の皆さんが感染の恐怖と隣り合わせで3か月を暮らしてきたことを思うと、本当の意味で日本社会を担ってきたのはこれらの現場を支えた人たちなのだと感謝の念を抱かずにはいられません。

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©iStock.com

 それもこれも、政治的な理由で発令は遅れたものの安倍晋三政権が最終的に緊急事態宣言を出し、国民も強制ではない外出自粛「要請」に対して可能な限り協力し、マスクをしたり、手洗いうがいをする中できちんと耐えたことである程度感染拡大を防ぐことができたと言えます。なぜか安倍ちゃんの支持率はダダ下がりしていますが、これからポストコロナ、ニューノーマルの日本社会に向けてきちんとした経済の「出口戦略」を考えていく必要があります。支持はしませんが頑張っていっていただければと存じます。

緊急事態宣言の全面解除に先立ち、記者会見する安倍晋三首相と基本的対処方針等諮問委員会の尾身茂会長 ©︎時事通信社

医師・津川友介さんの予言がジャストミート

 で、国民が一丸となってようやく危機を脱したかなというところで、いまごろになって「緊急事態宣言は要らんかったんや」などと言い出す知識人が増えてきております。米UCLA助教授で医師の津川友介さんが緊急事態宣言発令直後に、そのまんまの予言をされているのですが、それがフルスイングでジャストミートした形になってます。

医師・津川 友介さんの公式アカウントによるツイート

〈新型コロナ対策が奏功して感染者数、死亡者数を抑え込むことができたら、そこまで厳格に休業要請する必要なかったのではないかなどと言い出す人が出てくることを心配しています。抑え込みに失敗して感染爆発起こしたら失策だと責められ、成功してコントロールできてもそこまでやる必要なかったと責められる。他の国はもう少し政府やリーダーシップに対して支持的だと思うのですが〉

 振り返れば、日本人の特性として「自粛せえや」と言われれば、巷で自粛警察が自警団的に組成されてしまうほど同調圧力が強い一方、その音頭を取る政権は常に馬鹿にされ続けてきました。古くは阪神淡路大震災のときの村山富市さん、東日本大震災に伴う福島第一原発事故のときの菅直人さんのように、何故かうっかりさんが危機発生時にきちんと首相の座にあるというのが我が国の伝統芸能のようでございます。この日本政治特有の間の悪さは、安倍ちゃんお友達内閣が陣頭指揮を執り、その横で賭けマージャンが勃発してしまう宿命を呼び起こしたのでしょうか。