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「レジ袋有料化」意味はあるのか――日本での導入がこれだけ遅れた本当の理由

海洋プラスチック 永遠のごみの行方 #1

2020/06/12

 プラスチックごみの削減を目的として導入される「レジ袋の有料化」。賛否や疑問の声が上がるなかで推し進めるべき政策なのか。そもそも、レジ袋を有料化し、プラスチックごみを削減することで、私たちは環境に好影響を与えられるのか。

 極論や夢物語では解決できない環境問題に真正面から向き合った『海洋プラスチック 永遠のごみの行方 』(角川新書)より、レジ袋有料化をどう捉えるべきか解説する。

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日本独自の「サーマルリサイクル」

 プラスチックはもともと石油なので、よく燃える。燃やしたときに出る熱は、一般の生ごみより多い。だから、プラスチックごみも、燃やしてその熱を利用すれば、見方によっては「エネルギーの再利用」ともいえる。一般のごみにまぜて燃やしたり、固形燃料にしたうえで燃やしたり、いろいろな方法がある。いずれにしても、たんに燃やしてしまうのではなく、発生した熱で発電したり、温水をつくって周囲の施設で使ったりするプラスチックごみの処理方法をサーマルリサイクルという。

 サーマルリサイクルは和製英語で、すでに述べたとおり、世界標準ではリサイクルと認められていない。ふつうは「エネルギーリカバリー」という。日本語では「熱回収」だ。

 世界のプラスチックごみのうち、リサイクルされているのは全体の9%。それに対して、日本のリサイクル率は8割を超えているとしばしばいわれ、リサイクルの優等生の感がある。だが、この「8割」には熱回収が含まれている。

 一般社団法人「プラスチック循環利用協会」の「プラスチックリサイクルの基礎知識2019」によると、2017年に国内で出たプラスチックごみの総量は903万トン。そのうちリサイクルされたのは86%の775万トンだった。

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 この86%の内訳は、サーマルリサイクルが58%でもっとも多く、マテリアルリサイクルが23%、残りがケミカルリサイクルだ。このほかに、熱回収しない単純焼却が全体の8%あるので、ようするに58%プラス8%の66%が焼却処分されていることになる。マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの合計は27%にしかならない。

虚飾されてきたリサイクル率

 つまり、日本のプラスチックごみは、世界標準でみると7割が焼却処分され、リサイクル率は3割たらずということになる。ヨーロッパ全体のプラスチック協会にあたる「プラスチック・ヨーロッパ」が公開しているデータによると、18年のヨーロッパ各国のリサイクル率は3割前後なので、世界的にみると、日本のリサイクル率はごく標準的ということになる。とくに優等生ではない。

 ただし、日本に多い熱回収がプラスチックごみの処理方法として特異なのかというと、かならずしもそうではない。ヨーロッパのデータには、ごみの埋め立て処分を制限している国々として、スイスやオーストリア、オランダなど国土面積の小さい国を中心に10か国が掲載されており、いずれの国も3割前後がリサイクル、残りのほぼすべてが熱回収にまわされている。環境先進国とされるドイツも、リサイクル率は4割弱で、残りのほぼすべてが熱回収だ。

 日本はこれまで熱回収をリサイクルに含めてきたので、世界的に特異な「リサイクル率」を達成してしまっているだけで、熱回収そのものは、現実には特別な処理法ではない。プラスチック循環利用協会の「プラスチックリサイクルの基礎知識2019」ではサーマルリサイクルという言葉が使われているが、環境省は最近、それを使わずに熱回収というようになった。