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愛知県豊田市で下校中に大けが なぜ被害者である姉妹が転校を余儀なくされたのか

小1女児は「つきたおされたのがどうがになって心の中で見ちゃう」

2020/06/15

「あのとき、死ぬかと思った。怖かった」

 事件から3、4ヶ月後、転倒をしたAも、目撃したCも、当時の状況をようやく両親に口にした。

 A「あのとき、死ぬかと思った。怖かった」

 C「私もそう思った」

 Cは、この事件の当事者ではなく、目撃者だが、トラウマ反応が起きているようだ。

「きょうだいではなおのこと、自分が助けられないという罪悪感が生じているのかも。トラウマ的な傷つきはありえる」(斎藤教授)

 2019年4月、校長が異動になり、新しい校長になった。このとき、AとCの母親は改めて、いじめ防止対策推進法の「重大事態」として扱ってほしいと申し入れをした。校長は「問題行動ではない」「児童相談所との連携は必要はない」との返事だった。

写真はイメージです ©iStock.com

 保護者説明会を開催し、学校側から報告をするように求めても、校長は「時間が経ってしまっています。平日の夜に、保護者を集めるのも大変でしょう」と煙に巻いた。

 Aは2019年4月に他の小学校に転校した。9月になると、姉のCも学校に登校できなくなった。これまでの経緯から、Bと校内で近くにいること自体が精神的苦痛になっていたからだ。

「1回(の暴行事件)でもPTSDが起きます」

 10月11日、この件に関する学校内のいじめ対策委員会が開かれた。開示資料によると、校長、教頭、教務主任、校務主任、保健主事、生徒指導主任、相談主任、学年主任、養護教諭。以下の3点を結論を出している。

1) 本行為は「いじめ」であり、さらに、「いじめの重大事態」にあたる。AとBは当事者間は、一定の人間関係にあり、Aは大きなけがを負ったこと、これに関わる行為に関して欠席が33日あったこと、その後、PTSDと診断されたこと、結果的に転校を余儀なくされたことが理由になっている。
2) Bが姿を見せることで、Aの姉であるCが不快な気持ちになることはいじめには当たらない。理由は、BはCに何もしていないためだ。
3) 本行為は「いじめ重大事態」にあたるが、全貌は明らかであること、Bの突発的な行為によるものであることから、第三者委員会は開催開催しない。

 この結果は、11月1日、AとCの両親に面談し、校長から委員会の結論として書面で回答した。3日に加害男児Bの父親に口頭で「いじめ重大事態」と伝えたという。

「ただ、Aの転校前は、重大事態と認定されていませんでした」(母親)

事件の現場となった豊田市内の道路 ©︎渋井哲也

 その後、2020年2月24日、AとCの両親は、豊田市と市教育長あてに要望書を提出した。「被害者側が望む調査、報告が行われていない」などとして、あらためて、いじめ防止対策推進法のもとで調査委員会の設置をお願いした。

 3月30日、市教委からの回答が寄せられた。それによると、〈Aの被害は認め、学校としての調査をして事実関係が十分に明らかにされた〉〈また、Aに対する「いじめ」は、今回の件以外には認められなかった〉とした。その上で、学校としては、再発防止や全体指導を行なっており、AやBに再度聞き取り調査をすることは、過度に心理的負担を与えるとして、調査委員会の設置はしない、というものだった。

「1回(の暴行事件)でもPTSDが起きます。まして、怪我もしています。市教委が、対応しないのはありえない」(斎藤教授)