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『スター・ウォーズ』お手軽な超能力になった“フォース”を揺り戻してくれた!ーー『マンダロリアン』

2020/06/28
 

 去年、ついに映画史に残る壮大なSFサーガ『スター・ウォーズ』シリーズが完結した。しかし、2015年からスタートした新三部作を手放しで称賛する人は少ない。チグハグな脚本など欠点を挙げれば切りがないが、物語の重要な要素である「フォース」の扱いはあまりに酷かった。知らぬ間に機能が拡張され、宇宙間でのフォース・チャット(会話)など“何でもあり”のお手軽な超能力になり果ててしまったのだ。

 そもそもフォースとは何か。遠い昔、遥か彼方の島国・日本では、日本語字幕に「理力(フォース)」という訳語があてられていた。国語辞書にも載っていないオリジナルな造語らしい。単なる超能力とは違う、森羅万象の“理”に通じる神秘的な力のように感じられた。実に絶妙なネーミングである。

 その後、約40年を経て価値が暴落してしまったフォースだが、動画配信サービス「ディズニープラス」で配信中の『スター・ウォーズ』シリーズ初の実写ドラマ『マンダロリアン』では、見事に揺り戻しに成功している。

 舞台は、新三部作が始まる前の銀河。主人公は、孤独な賞金稼ぎの男。その相棒が、“ベビーヨーダ”ザ・チャイルド。あの最強のジェダイ戦士ヨーダと同じ種族の赤ん坊だ(見た目は赤子だが、年齢は50歳)。ヨチヨチ歩きで反則級にカワイイこの生き物が、劇中で唯一のフォースの使い手だ。最もか弱い存在が得体の知れないフォースを使い、大ピンチの主人公を救う。そして、力を解放した後は疲労困憊しスヤスヤと眠りにつく。

 事ほど左様に、作劇で重要なのは「不自由さの設定」である。「ここぞ!」という時しか使えない“伝家の宝刀”が物語の劇性を高め、観客はカタルシスを得られるのだ。SFという架空の世界こそ「何でもありはご法度」という物語法則の“理”をフォースが教えている。脚本は、フォースと共にあらんことを。

INFORMATION

『マンダロリアン』
https://disneyplus.disney.co.jp/program/mandalorian.html

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