6月1日より改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が施行された。

そこで、世界におけるパワーハラスメントの現状や対策について紹介するとともに、世界の企業の対応策の特徴について述べていく。

パワーハラスメントは、日本発祥の言葉である。英語では、一般にworkplace bullying やmoral harassmentという。そのため、英語でpower harassmentと言っても通じないことが多い。ちなみに、セクシャルハラスメント(sexual harassment)は世界どこでも通じる。本稿では、混乱を避けるためにパワーハラスメントという用語で統一する。

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パワーハラスメントの日本と海外の捉え方

 

言葉が違うだけでなく概念も若干違う。

日本では、同じ組織の上司が部下に対して、職務上の優越的地位に基づき、精神的な苦痛を与える言動を指すことが多い(例えば、東京地判平21・10・15判決)。セクシャルハラスメントと並んでパワーハラスメントが大きなハラスメント課題として捉えられ、パワーハラスメントに関する研修も存在する。

その前提として、

・終身雇用を前提とした雇用のため転職が難しく、内部で継続的に温存されやすかった
・集団主義、チームワーク重視の仕事の進め方のため上司の言動が精神的負担になりやすい
・職務の範囲が曖昧であるため上司の命令が広範囲に及びうるので本来職務範囲外の命令でも拒みにくい
・職場で部下を怒鳴ることを是とする一部の企業の組織風土が残存している

などが考えられる。

日本のパワーハラスメントと世界のパワーハラスメントとは、前提となる企業社会や社員の在り方が異なる点には注意が必要だ。

 

一方、日本ではさほど問題視されない行為でも、海外ではパワーハラスメントとして問題視される例があることにも注意が必要だ。

例えば、以前私が研修をさせて頂いていた日本企業の海外事務所で現地社員を励ます意味で背中をたたく行為がパワーハラスメントであるとして問題となったことがあった。