そのため、従業員の宗教や民族については、前提となる知識が必要である。人種・民族・宗教が異なる場合のダイバーシティマネジメントの仕方について十分に研修を行うことが必要な場合も多い。
(3)腐敗などコンプライアンス違反の場合への的確な対処
第三に、汚職や腐敗などコンプライアンス違反への配慮である。
先日アフリカ出身のビジネスパーソンとパワーハラスメントについて議論していたら、「アフリカでは、腐敗と絡んで厳しい指導をする必要がある場合があるが、その際にパワーハラスメントと思われない方が良い」との意見があった。
贈収賄や横領などはアフリカに限らず世界のどこでもあるが、これらの事件について追及する過程で厳しい口調になったり、証拠なく疑念を持ったりすることが、相手の従業員にとってパワーハラスメントと解釈されてしまう。
言うまでもないが、このようなコンプライアンス違反については、弁護士を立てて、十分に証拠を明示して進めるべきであろう。これらの対処についても研修等で周知すべきであろう。
執筆:山中俊之
株式会社グローバルダイナミクス代表取締役社長、神戸情報大学院大学教授。90年、外務省入省し、エジプト、英国、サウジアラビアへ赴任。外務省退職後の2000年、株式会社日本総合研究所に入社。09年にはアメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にてグローバルリーダーシップの研鑽を積む。10年にグローバルダイナミクスを設立。著書には『世界94カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(ダイヤモンド社)、『世界96カ国をまわった元外交官が教える 外国人にささる日本史12のツボ』(朝日新聞出版)などがある。