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日本では「35歳までに子育てを始める」のがあまりに難しすぎる

かかるお金は増えたのに、「産める期間」は延びていない

東京とその周辺の人々は、こうした資本主義的で社会契約的な子育てにすっかり馴染んでいて、子どもの教育にも多くのお金をかける。上昇志向な子育てを全国で最もやってのけているということは、子育てに対する彼らの“賭金”は全国で最も高い水準だということであり、勢い、全国で最もコストやリスクに敏感な子育てとならざるを得ない。人口過密に伴う住宅事情の厳しさも手伝って、経済的なバックボーンもなしに挙児を決断するのは東京では難しい。

かといって経済的に豊かになるまで結婚や出産を控えるにも限界がある。資本主義と社会契約が徹底したとはいえ、人間が法人のような不老不死の存在になりおおせたわけではないからだ。今日ではよく知られているように、女性は30代後半になると妊娠する力が弱まり、ダウン症などの先天性疾患のリスクや流産や早産のリスクが高まっていく。あまり知られていないが、これは男性にも当てはまることで、年齢が高くなるほど妊娠させる力が弱まり、精子には多くの突然変異が含まれるようになっていく。

だから「もう少しお金が貯まるまで」「もう少しリスクを見極められるまで」「もう少し収入の多いパートナーと巡り合うまで」と結婚や子育てを先延ばしにしていると、現代人は子どもをもうける時機をたちまち逸してしまう。本書の第三章で現代人の健康と寿命の延長について触れているが、生殖適齢期に関しては延びておらず、高齢での挙児は難しく、コストとリスクに満ちている。

東京の男女が子育てを始められないのは当然だ

上昇志向な子育てが行き届き、男性も女性もキャリア志向になった現在では、男女を問わず大学や大学院への進学率が高まっている。そのうえ雇用の流動性が高まり、キャリアやアイデンティティがはっきりと固まる時期も遅れがちなので、パートナーを選び、子どもをもうけようと考えていられる適齢期は非常に短い。