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「防衛省報告書」入手 イージス・アショアのレーダーは使い物にならない

 6月15日に突如、河野太郎防衛相が配備計画中止を発表した地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。河野防衛相は、中止の理由を「ミサイルのブースター(推進装置)の落下問題」と説明している。しかし、そもそもイージス・アショアの根幹をなすミサイルの迎撃機能に疑義を呈する報告書が、昨年3月、防衛省の官僚によって作成されていたことが、「週刊文春」の取材でわかった。

山口県知事に陳謝する河野氏 ©文藝春秋

「週刊文春」が入手したのは、昨年3月下旬に、防衛官僚が渡米し、ロッキード・マーチン社を視察した際の報告書。A4判2枚にわたるもので、次のように記述されていた。

〈LRDR自体には射撃管制能力は無い〉

 イージス・アショアに採用される予定だったロッキード社製のレーダー「LMSSR」(以下SSRと記す。通称SPY-7)は、LRDRの派生型であり、性能的にほぼ同一とされる。

 海上自衛隊の元海将で、弾道ミサイル防衛にも深く関わってきた伊藤俊幸・金沢工業大学虎ノ門大学院教授が解説する。

「射撃管制能力というのは迎撃ミサイルを目標に誘導する能力です。イージス・システムにおけるレーダーには、飛んでくる弾道ミサイルを探知、追跡し、迎撃ミサイルをそこへ誘導して、目標へ衝突させる能力が必要です。通常の軍艦では、レーダーはあくまでも“目”であり、目標へ自らの武器を誘導する“神経”となる射撃管制システムは別にありますが、最新のイージス・システムではそれが一体化しています。例えば、米海軍のイージス艦が搭載予定の米レイセオン社のSPY―6はもちろん射撃管制能力を備えたレーダーです。にわかには信じがたいのですが、もしロッキード社のSSRに本当に射撃管制能力がないのであれば、イージス・システムとして機能させるためには、追加で“神経”となる別システムを組み合わせる必要が生じ、さらにコストがかかる」

「イージス・アショア」の実験施設を視察後、記者団の質問に答える河野防衛相 ©共同通信社

 イージス・システムが機能しなければ、当然、弾道ミサイルを迎撃することはできない。報告内容が事実なら、イージス・アショアは、弾道ミサイル迎撃が困難だったことになる。

 しかし、防衛省は、報告から7カ月後の昨年10月末、このレーダー「SSR」2基を約350億円で購入する契約を結んでいた。

 防衛省に、視察の日付を特定したうえで情報公開請求を行うと、報告書は存在し、公文書として保存されていた。公文書は、防衛技官2人が、昨年3月25日から6日間の日程でアメリカを訪問、ロッキード社でのLRDRの情報収集及び、米ミサイル防衛局(MDA)との意見交換をしたと記載されている。だが、肝心の報告内容は、すべてが黒塗りされていた。

 小誌が、公文書の黒塗りされていない文字の大きさから、黒塗り部分の文字数を割り出し、入手した報告書の文字数と比較すると大半の部分においては一致していたが、一部で改変されている可能性が高いことがわかった。

情報公開で入手した黒塗りの公文書(下)と、ディープスロートが示した報告書

 この重要な情報は、防衛省や官邸に報告されたのか。