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連載近田春夫の考えるヒット

ラップもダンスもこなす「超特急」の他のアイドルにはマネできない“味”――近田春夫の考えるヒット

2020/07/02

『Stand up』(超特急)/『Mazy Night』(King & Prince)

絵=安斎 肇

 俺はヒップホップに関しては、いわゆるオールドスクール、すなわち“パーティーラップ”の時代から、結構関心は持っていた方だと思う。

 というのも、その、メロディを重用(ちょうよう)しない、喋り口調をそのまま音楽に乗せるというアイデアが、口語日本語の持つ――例えば英語表現と比較した時――どうしてもイントネーションに縛られてしまう構造的特性や、音節と情報量の関係に、当時結構不便を感じていた“ロックミュージシャン”にとっては――朗報とはオーバーだが――一種突破口とでもいおうか、ヒントを示唆してくれる方法論にも思えてならなかったからである。

 とはいえそれは“ラップ”というアートフォームの持つ、技術論的な側面への興味にとどまるレベルの話ではあった。

 ヒップホップという文化に本気で私がのめり込んでいったのは、'85年に制作された、RUN-D.M.C.らが出演の映画『Krush Groove』からである。そこに展開される音楽世界が、ロックとも、またソウルミュージックのマナーともまったく違う、斬新な肌触りを持っていて興奮したからだ。

 そうした意味では、パンク/セックス・ピストルズとの出会い以来の“強い衝撃”を受けた出来事といっていい。

 要するにヒップホップとは、ことラップという一技術方法の発明にとどまらぬ、いってみれば、若者たちの価値観全般に及ぶ革命の記号だったのだ。音からだけではわからなかった色々なことを、この映画は教えてくれたと思う。

 ひとつは、アディダスなどに代表される、ストリートファッションのパワーの意味だ。そしてもうひとつは、ラッパーやDJの刺激的な動き/アクションの視覚的魅力である。

 映画を観ていて、なかでも印象深かったのがL.L. Cool Jのパフォーマンスだった。

 未だに、ラッパーの仕草は、基本その流れの延長線上にあるといっても過言ではない。

Stand up/超特急(スターダスト)スターダストプロモーション所属の同グループデビュー8周年シングル。その間に7人から5人体制に。

 今週の超特急が、'90年代ヒップホップを意識した作りということなので検証してみると、やっぱ大元はL.L.だよなぁ! と、再認識をしたりもするのだが、面白いのは、そうはいいつつそこには微妙に“和のテイスト”のちりばめられていることだった。

 たとえていうと、本来がアメリカのヒップホップのシーンでは、ラッパーとダンサーは“稼業違い”なのか、踊りも達者にこなすMCは、少なくとも俺の記憶にはないのだ。それがここでは、ごく自然に、ラップをやる人がブレイクダンスも踊って見せてくれる。

 そんなことを色々と考えているうちに、この『Stand up』の映像に見られるような、ラッパー的な動きもブレイクダンスも楽勝でやってのけてしまうという軽さ、器用さ、お気楽さこそが、競合するアイドルたちには決してマネの出来ぬ、超特急の誇るべき“味”なのでは? という気も段々としてきたのだった。

Mazy Night/King & Prince(Universal)同グループ5枚目。ジャニーズが主演するテレビドラマ『未満警察 ミッドナイトランナー』主題歌。

 King & Prince。

 一分の隙もないっていうのが、逆に息が詰まる感じにもなるのよね。俺には。

今週のエウレカ「これまで食器洗いの際、あまり泡立てずに使って、この食器用洗剤、汚れが落ちねぇなと思っていたんだけど、テレビCMのようにスポンジに洗剤を垂らした後、水を含ませて泡立ててから使うと、皿の油汚れがよく落ちるんだよね」と近田春夫氏。「CM見ていてなんであんなに泡立てているのかって思ってたけど、その意味をようやく理解したよ」

ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。

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