今、南米ブラジルがヤバイ。極右のボルソナロ大統領は、アマゾンの熱帯雨林火災が急拡大しても知らん顔。新型コロナウイルスを「ちょっとした風邪」と言い、100万人以上の感染者が出ても独自路線を突き進む。
陽気なサンバの国から一転、“修羅の国”と化したブラジル。近年の混迷ぶりは、ブラジル発のドキュメンタリー『殺人犯の視聴率』(ネットフリックス)を見ても明らかだ。
主人公は、人気報道番組の司会者で、州議会議員として政界進出も果たしたウォレス・ソウザ。実は彼には裏の顔が……。番組の視聴率を上げるため、数々の殺人事件の黒幕として自作自演の犯行を繰り返していたという。その疑惑追及の顛末を追った作品だ。あまりに荒唐無稽な話に聞こえるが、実際に2009年に起きた事件である。日本で言えば、宮根誠司さんや羽鳥慎一さん級の司会者が地方議員となり、その裏で実は反社会的集団の親玉として犯行計画を練り、自らの番組でその犯罪を取材・放送していたことになる(※たとえ話です)。
全7話、目を覆いたくなる凄惨な展開が続き、何人もの関係者がことごとく死んでいく。まさに修羅の国である。作り手目線で見ると、この作品は実に「構成」が巧みだ。物語を牽引するのは、「ソウザは善人か、悪人か」という問い。視聴者は、知らぬ間にソウザを裁く陪審員のような立場におかれる。そして、当事者の一人として事の顛末を追体験させられるのだ。結末には、誰しも想像し得ない阿鼻叫喚の展開が待っている。私は鑑賞後、思わず言葉を失ってしまった……。
この作品は、巧みな構成(ストーリーテリング)を通して、明確に“ポピュリズムへの警鐘”を鳴らしている。
同様に、なぜ数々の問題をはらんだ極右のボルソナロ大統領が誕生したかは、同じくネットフリックス作品『ブラジル―消えゆく民主主義―』に詳しい。合わせて是非。
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