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《東京都公表のデータでは全体像が見えない》“世界一安心な都市”になるために必要な2つのこと

WHO事務局長上級顧問が提言「五輪開催の最低条件」

2020/07/06
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安易な楽観論は極めて危険

 このような状況の中、日本国内には、「日本を含めアジア諸国は、感染が拡がらない特別なファクターがあるはずである」との楽観論も多い。勿論、その可能性は否定されるものでもないが、安心するのはそのエビデンスが確認できてからにするべきだ。

 解除後にまず感染が増えるのは活動が活発な若者だ。それは韓国、米国、そして、東京でも変わらない。感染が急増しているアリゾナ州では若者が感染者の半数以上を占めており、バーやレストランの再開とともに感染が増加している。

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 米国CDC(疾病対策センター)のレッドフィールド所長は、「若者の多くは無症状の感染者で、知らないうちに感染を拡大させてしまっている。実際には報告感染者の最低10倍の感染者はいるだろう」と危機感を表している。東京都の感染者急増に関して、都の関係者や厚労省が、「若者が多く、軽症や無症状が多いから前回と異なる」という見解を示すことにより、危機感を払拭しようとしているのとは対照的だ。

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 重症化しやすい高齢者に比べて、若者は軽症や無症状感染者が多い。しかし、彼らが自らの感染に無自覚で活動を続けることで、感染をさらに広げていく可能性がある。特に、東京のような大都市でそのような潜伏患者が増えたら、症状のある感染者を特定して対応していくクラスター対策が、以前よりも効果の薄いものとなってしまうであろう。

 筆者は、日本が第1波を抑え込めたのは、日本特有の「ファクターX」などではなく、1~2月の地道なクラスター対策で感染の急拡大を食い止められたことと、3月末のギリギリのタイミングによる自粛効果によるものであったと考えている。だが、今回はクラスター対策による時間稼ぎが難しくなる可能性がある。

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 また、今は死亡者は増えていないのだから慌てて対応を取る必要はないという意見もある。

 解除後に、感染が再拡大している米国などでも同様に感染者数の増加に比べ死亡者の増加が抑えられている。それは、重い症状のある感染者のみならず軽症者へも検査するようになったこと、治療自体も改善してきたこと等がその要因と考えられる。しかし、この感染が次のステージに入り、リスクの高い人々に拡がってしまうと死亡率はすぐに上昇に転じる可能性があることを米国等の関係者は強く警戒している。