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日本の女性は「一人」を選ぶ――「家族解体」はなぜ進むのか

橘玲インタビュー「コロナ後の女と男」

2020/07/12

 橘玲さんの「週刊文春」連載が『女と男 なぜわかりあえないのか』(文春新書)として書籍化。コロナ禍を経て人々の“ディスタンス”はどう変化するか。アフターコロナの男女関係を進化論から考える。

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 今回のコロナ禍を経て、「女と男」の関係はどうなっていくのか。それを考えるにはまず、進化の過程でヒトに埋め込まれた本能を知る必要があります。

 人類(ホモ属)は700万〜500万年前に東アフリカでチンパンジーとの共通祖先から分かれ、諸説あるものの、現生人類(ホモ・サピエンス)が登場したのは約77万〜55万年前、アフリカを出てユーラシア大陸へと広がったのは約5万年前と考えられています。農耕が始まったのは約1万年前ですが、これは進化にとってきわめて短い時間で、どれほど科学や文明が発達しても、私たちはいまも旧石器時代の脳で暮らしています。

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「利己的な遺伝子」は、生存と生殖に最適化するようヴィークル(乗り物)である生き物を「設計」します。そこで重要になるのは、男女の生殖の非対称性です。

男は「乱交」を望み、女は「純愛」を求める

女と男 なぜわかりあえないのか』(文春新書)

 ヒトのオス(男)にとって、精子をつくるコストはきわめて低いので、生殖の最適戦略は、できるだけ多くの女と性交することになります。男の理想はハーレムをつくることですが、他の男も同じことを考えているのですから、その競争に勝ち残らなければなりません。こうして男たちはヒエラルキーをつくり、地位をめぐって争うようになりました。

 一方、ヒトのメス(女)にとって卵子のコストはきわめて高く、いったん妊娠すれば出産まで9カ月もかかり、生まれてからも数年間は授乳・育児しないと子どもは生きていけません。これほどまで子育てに手間のかかる動物はほかにいません。ヒトの脳が過剰に発達したことで、胎内で成長を待っていると頭蓋骨が産道を通れなくなり、「未熟児」状態で出産するしかなくなったからだとされます。

 過酷な旧石器時代の環境では、パートナーの男がいなければ、子どもを抱えた母親が食料を確保するのは困難だったでしょう。母子ともども飢え死にしないためには、長期の関係をもつことができる男を「選り好み」しなければなりません。女にとって誰とセックスするかは死活問題なのです。

 男は「競争する性」で「乱交」を望み、女は「選択する性」で「純愛」を求める。しかしこれでは、生殖戦略が真っ向から対立してしまいます。これが、女と男が「わかりあえない」進化論的な理由です。