ロシアで7月1日、憲法改正の是非を問う全国投票がおこなわれた。賛成は約78%に上り、プーチン大統領(67)は最長2036年まで続投が可能となった。
任期延長に関しては、後継者選びに余裕をもたせることで権力争いによる国の不安定化を回避したいプーチンの狙いがある。欧米による経済制裁、サウジとの原油価格競争、さらには新型コロナウイルスによる経済危機といった厳しい状況下にあって、当初の任期の2024年までに後継に権力委譲するのは得策ではないと判断したためだ。
すわ終身大統領かと続投の件ばかりが大々的に取り上げられているが、今回の改憲はそれだけではない。ひと言で言えば、ロシアが異常なまでに保守化を強めたということだ。
改正はじつに200項目以上に及ぶ。領土割譲やその行為と呼びかけの禁止、神への信仰の保持、同性婚の事実上の禁止、祖国防衛者たちへの追悼、ロシア語の公用語化、大統領候補や閣僚、議員、知事などの二重国籍を認めない、といったように前時代的なまでに保守的な内容となっている。エリツィン時代にできた旧憲法を大改定し、プーチンイズムをあますところなく注入した新憲法だ。
強いロシアを目指し、二度とソ連崩壊のような悲劇は繰り返さない。そんな指導者としての強い意志の表れと言えば聞こえはいいのだろうが、政財界を牛耳る特権階級たちによる現状維持という意味でもある。