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「覚書」には《SNSを利用せず、芸術家業務を行わないものとする》

 その後、事務所から郵送で届いた「覚書」は渡辺ミキ社長の名前で作成されており、20代のA氏には酷な一文が記されていた——。

《本書締結日から1年間、乙(A氏)は、SNSを利用せず、かつ芸術家業務を行わないものとする》

 A氏が続ける。

「僕が文春オンラインさんとこうして、お話ししているのも、この不当な『覚書』の件が、一番の理由です。タレントに手をつけて、いらなくなったらタレント生命も終わらせる。他の事務所に入るのを禁止するだけでなく、フリーでの活動も禁止して、この時代にSNSも認めないって、今までしてきたことが全部壊される気がしてセクハラ以上にショックでした。

 何人かの弁護士さんに相談したら、『サインする必要はない』と言ってくれて、『覚書』には何も応じませんでした。退所の合意を内容証明で社長宛に送付し、事務所を去りました」

A氏に送られてきた「覚書」
覚書の「第6条」には《1年間、芸術家業務を行わないものとする》と書かれている

 

「覚書」へのサインを拒否する旨を伝えたA氏からのLINEメッセージ
A氏が退社の意思をワタナベエンターテインメントに伝えた内容証明

公取は「悪しき慣習」にメスを入れたばかり

 昨年8月、公正取引委員会は、芸能事務所がタレントと交わす契約について、独占禁止法上問題となり得る行為をまとめ「業界の悪しき慣習」にメスをいれた。退所した芸能人を出演させないようテレビ局に圧力をかけたり、契約終了後、一定期間活動できない義務を課すことを問題視し、芸能事務所に対し改善を求めてきた。

 これを受け2019年11月、日本音楽事業者協会は所属タレントらと結ぶ契約内容の見直しに乗りだしたことを公表している。芸能界では常識だが、ワタナベエンターテインメントの渡辺ミキ社長は、日本音楽事業者協会の常任理事を務める重鎮である。

 7月8日、「文春オンライン」取材班が「覚書」の存在について問うと、ワタナベエンターテインメントの担当者はこう回答した。

「覚書については、大澤がすでに解任して社にいないのでわかりかねますが、昔はともかく今の時代、ありえないと思います。社長も承認していないと思います」

 緊急朝礼で吉田会長が「不適切な関係は存在していない」と発言したことについては、

「会長の言葉足らずで、まったくの誤解です。『不適切な関係は存在しない』というのは大澤とAさん以外の弊社所属タレントの関係についての話です。大澤とAさんの関係については不適切だったと考えています。同様の内容を所属タレントにはメールで送信しており、社員も皆わかっているものだと思っていました」

「覚書」について、ワタナベエンタの担当者は「社として承認していない」と主張したが、前掲の画像にあるとおり、書面の「甲」の欄には「代表取締役 吉田美樹」の名前が書かれている。本当に大澤氏が社に断りもなく社長の名前をつかってタレントの退所後の活動を制限していたならば、重大な背任行為にあたり、セクハラと同様に大問題ではないか。

 問題の緊急朝礼後、社員だけでなく、多くの所属タレントが事務所に対する不信感を漏らし始めているという。取材班はワタナベエンタ所属タレントの筆頭格でもあるベテランタレントの中山秀征(52)を直撃取材。胸の内を聞いた——。(#6へ)

「文春オンライン」では、芸能プロダクションの問題についてなど、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式」ツイッターのDMまで情報をお寄せ下さい。

 sbdigital@bunshun.co.jp

 https://twitter.com/bunshunho2386

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