『umbrella』(SEKAI NO OWARI)/『星影のエール』(GReeeeN)
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セカイノオワリの新曲がちょっと懐かしかったんですよね、と担当の若者。印象がどこかオフコースの時代っぽいのだとか。そこで聴いてみると……ウームなるほど。
そおかぁ、このあたりの感じが懐かしいんだぁ! 実感させられたのは、若者との世代の違いのことであった。
私などは、懐かしいというとき、せいぜいが'70年代いっぱいぐらいまでだろうか? そこからこっちは、もう、大体全部今の音楽の範疇に思えてしまい、郷愁を覚えることがあまりないのだ。
オフコースは、'70年代から活動はしていたが、大ブレイクしたのは'80年代である。そんな時代に多感な時期を過ごした世代には、オフコース/小田和正はきっと思い出深いものなのだろう。てか、それより昔の音楽は、リアルタイムでは聴いてないんだもんね、歳まわり的にそもそも。
俺が『umbrella』を聴いて懐かしさを感じるとしたら、それは結局、そこに発生当初の“ニューミュージック”への原点回帰が見られるからだろうか。
先に述べたように、私にとって今日のjpopは、系譜的には'80年代的音楽やその元となるニューミュージックの延長線上にあるものなのだが、この数十年の月日が、進化/洗練させたもののあるのも事実である。
ひとつ思うのは歌詞世界で、そこに込められる恋愛、ことに失恋の心情のようなものは、いつかしら随分とライトになってきている。
この、セカイノオワリの歌詞には、そういった意味での“古臭さ”が、切なくまじめに全編に満ち溢れているといったらよいか? この“しめりっ気”が、なにかかつてのシーン/景色を思い起こさせるのかもしれない。
まぁ、その辺りは人それぞれによって感想も異なるだろうから、なんともいえない部分もあると思うが、ビックリしたのは、この、極めて“女性性”の強い歌詞を書いたのが、実はFukaseだったということだ(最初はてっきりピアノを担当するSaoriが書いたものだとばかり思っていた)。
もともとNOFXやランシドといった、英語圏の過激なパンクに影響を受け、この道に入ってきたというFukaseが、一体、そこからどのようにして、こうした“女子受け”するような、叙情性溢るる作品を作るまでに至ったのか?
そんなことを思いながらあらためて歌詞を眺めていると、主人公(多分女性)のことが気になってきた。自分は、
♪君を守る為のそれだけの傘
で構わぬというのだから、ものすごく尽くす系? な控えめな性格ではあろう。それが何故か二人称は“君”なのだ。なんといったらよろしいか、妙に上からというか強気に男に振る舞うではないか。このキャラだけは、懐かしきニューミュージックの世界には存在していなかったかも。
GReeeeN。
善男善女の心を知り尽くした作品といっていいだろう。
今週の小銭を数える「7月1日からお店の買い物袋が有料化されたじゃん。小袋一枚3円~5円、金払って買うのも妙に惜しい感じで、つい家に戻って前に貰ったクシャクシャなビニール袋をもってきたりしちゃうんだけど、それがまた小者って感じでいまいましいんだよね」と近田春夫氏。「いまやコンビニにすら、計画的ご利用が求められているんだね」
ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。
