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10年ぶりに公開の日本画からゴッホの《ひまわり》まで……新宿でいま出会える名画たち

アートな土曜日

2020/07/11
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 1976年にオープンした「東郷青児美術館」が、館名を「SOMPO美術館」と改めて、東京・西新宿の地でリスタートすることに。開館記念展として、「珠玉のコレクション−いのちの輝き・つくる喜び」が開かれている。

東郷青児ら日本画壇の重鎮がずらり

 タイトル名でうたっている通り、これは自前のコレクションで構成された展覧会。同館は50年弱の歴史の中で、オリジナリティに満ちたコレクションを形成してきた。選りすぐった優品を一挙に見せてしまおうというのだ。

 展示を順に巡ると、まず日本画壇の重鎮たちの作品がお目見えする。平山郁夫や東山魁夷といったビッグネームの作品から、日本の絵画特有の色合いが読み取れて興を誘う。

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 山口華楊の屏風絵《葉桜》は、全面的な修復が為されたうえで、およそ10年ぶりに人前へ姿を現したもの。細かく描写を尽くすところと、大胆にデザイン化して描いてしまう部分を同居させた画面は、眺めていると吸い込まれそうな透明感がある。

山口華楊《葉桜》

 最初の開館時には「東郷青児美術館」と名乗っていただけあって、東郷青児作品は群を抜いて充実している。淡い色彩とつるりとした質感を持った個性的な絵柄には中毒性があるのか、展示を順に眺めていくと「もっと、もっと」と、観たい気持ちが止まらなくなってくる。絵画内でおなじみの人物像が、三次元世界に現れ出てきたかのようなブロンズ作品が秀逸だ。

東郷青児《望郷》 ©Sompo' Museum of Art, 19017

印象派からエコール・ド・パリまでの名画も

 国内作品だけではない。同館といえばフランス近代絵画のコレクションで名高い。ルノワール、モネ、シスレー、ユトリロ、ドニ、シャガール、ジョルジュ・ルオーなどなど。印象派からポスト印象派、さらにはエコール・ド・パリと呼ばれた画家たちと、19世紀後半~20世紀前半あたりの、日本でとりわけ人気の高いアーティストの作品が揃っている。それらが惜しげなく並べられ、展示空間全体が清新で軽やかな空気に満ちている。

 そうした名画の中でも、ひときわ大切なお宝のように扱われている作品が、同館には幾枚かある。

 ひとつは、ポール・ゴーギャン《アリスカンの並木路、アルル》。紅葉した並木の葉が陽光にきらめく、幸せな田舎の風景。葉群れの色に合わせたのか地面までが赤と黄色に染まっていて不思議な感覚に襲われる一枚だ。

ポール・ゴーギャン《アリスカンの並木路、アルル》

 そして、ポール・セザンヌ《りんごとナプキン》。リンゴひとつで世界を驚かせてみせる! と言ったと伝わるセザンヌ。その気迫のほどがよくわかる作品である。

 さらには、言わずと知れたフィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》。名画の代表格ともいえるイメージと対面すると、興奮を誘う黄色の効果もあってか、気分がこの上なく高揚してしまうのだった。

 この3点ともすべて、もちろん会期中ずっと公開されている。従来も館の目玉として展示されてきたけれど、今回のリニューアルでよりいっそう近い距離でこれらが見られるようになったのはうれしいかぎり。