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「東大合格は努力か環境か?」『二月の勝者』作者と考えた“中学受験の親”が捨てるべき下心

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「君達が合格できたのは、父親の『経済力』。そして、母親の『狂気』」――刺激的なセリフでヒットしている中学受験漫画『二月の勝者』。

 その人気マンガの名場面と「中学受験の親が子どもにかけたいセリフ」を掛け合わせた異色のコラボ本『中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉』が話題だ。著者は教育ジャーナリストのおおたとしまささん。教育関連書籍を60冊以上執筆している中学受験の専門家だ。

『二月の勝者』作者・高瀬志帆さんとおおたさんに「中学受験の親が持つべき心構え」について話してもらった。(全3回の1回目/#2#3も公開中)

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©iStock.com

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高瀬 漫画の各シーンとおおたさんの言葉がぜんぶ見事にマッチングしているので、すごいなと思いました。それに、 “作者としての真意”をかなりくみ取ってもらっていると感じました。

おおた そういう意味で言えば、この本は『二月の勝者』を深く理解するための解説本や考察本のように読むこともできるでしょうし、先にこちらの本を読むことで『二月の勝者』がどういうメッセージを秘めた漫画なのかというのがわかる部分もあると思います。もちろんこの本単体でも中学受験の親がもつべき心構えを説いたものとして参考になると思います。

中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉

「中学受験生はかわいそう」というのは、余計なお世話だよね

高瀬 まず「はじめに」で感動しました。

おおた えっ、どういうところですか?

高瀬 「子どもにそのまま渡して読ませないでください」というところがいいなと思いました。実は私が『二月の勝者』を描いているときも同じ気持ちなんです。親御さんが咀嚼して、お子さんに伝えてほしいんです。この本にしても、漫画にしても、いちばん大きなテーマは、「誰かに正解を求めるのではなくて自分の頭で考えよう」ということですよね。漫画の前後のシーンも読んで自分の頭で考えてほしいというメッセージを最初に訴えてくれていることがうれしかったです。

おおた そこは私も企画を考えるうえで最初に大切にしたことです。12歳のための自己啓発本にはしないぞって。

高瀬 それに、「第1講」の<「中学受験生はかわいそう」というのは、余計なお世話だよね>というのがまさに私が最初にこの漫画を描こうと思ったきっかけなんです。じつは私自身も中学受験について知る前は、かわいそうという先入観が多少なりともありました。でも実際に取り組んでいるお子さんを見ていて、大人が勝手に「あなたたちかわいそう」と決め付けることで、子どもたちが「かわいそう」にされてしまっているとわかりました。最初にそこへのパンチをもってきていることが良かったです。

中学受験生に伝えたい 勉強よりも大切な100の言葉』(第1講)より ©高瀬志帆/小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中 

おおた ああ、良かった。

「東大に合格できるのは、努力か環境か」問題

高瀬 なかの文章にも響いた部分がたくさんあるのですが、「第91講」の<恵まれた環境に生まれたのなら、その恵まれた環境を最大限に活かして将来世の中の役に立つことが、恵まれたひとの使命だと思う>って、たとえば「第59項」の<偏差値で学校や人間の価値を判断するような浅ましい人間にならないために、いまキミは勉強しているんだよ>とかこの本のいろいろなところと連動していると思っていて……。