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「挺対協の償なえない大罪」 元慰安婦に韓国人より愛された日本人が語る“悲劇の真相”

「挺対協」“嫌韓”を作った組織の30年 #8

2020/07/20
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 挺対協(現・「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」)の不実について告発した元慰安婦李容洙(イ・ヨンス)氏の記者会見によって韓国社会は大揺れに揺れている。

 はたして挺対協とはいかなる組織なのか。彼女らの実態をよく知る日本人がいる。その女性の名前は臼杵敬子氏という。ライターとして女性問題に関心を深く持っていた臼杵氏は、半生を韓国太平洋戦争犠牲者遺族会を支援するための活動に費やした。90年代から議論が始まった日韓歴史問題を、最も間近で見つめてきた日本人の一人であるともいえよう。

 本連載では臼杵氏から見た、なぜ慰安婦問題が歪んでしまったのか、その真実について回想してもらう。そして挺対協とはどのような組織だったのかを、当事者として批評してもらおうと考えている。(連載8回目/#1から読む/前回から読む)

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臼杵敬子氏(中央)と元慰安婦(右)、キム・ジョンニム氏(臼杵敬子氏提供)

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「来る必要はない!」支援者を門前払いする元慰安婦

 私の韓国語は「じいちゃん、ばあちゃんの韓国語だ」とよく言われます。元慰安婦や遺族会の人々はみなおじいちゃんおばあちゃん。私は彼ら彼女らと30年近く近き付き合ってきたので、どうしても言葉の影響を受けてしまうのです(笑)。 

「アジア女性基金は無くなってしまうけど、臼杵さんに元慰安婦のフォローアップをしてもらえないか」 

 こう外務省やアジア女性基金サイドから相談を受けたのが、アジア女性基金が解散する前年である2006年のことでした。 

 06年にプレ事業を始め、07年から17年までの10年間、民間受託者として外務省のフォローアップ事業に私は取り組むことになりました。 

 アジア女性基金では償い金を配りましたが、その後、高齢者である元慰安婦たちがどう暮らしているのかがわからない。そこで私がフォローアップ事業者として、人脈を頼りに元慰安婦の自宅を訪ね歩き、健康状態を訊ね、医薬品などを届けるというケアサービスを行うことになったのです。 

 私のパートナーとなってくれたのが、遺族会のキム・ジョンニム氏でした。キム・ジョンニム氏は温厚な性格なので人当たりがいい。更に料理上手なので、みなで集まって食事をするときに腕を奮ってくれました。まさにフォローアップ事業にはうってつけの存在でした。 

 ある時、元慰安婦の沈美子(シム・ミジャ)氏が病床に伏していると聞き、日本にいた私はキム・ジョンニム氏に訪問を依頼しました。 

「来る必要はない!」 

 沈美子氏は彼女を門前払いしたそうです。沈美子氏は04年に、挺対協の不透明会計を目の当たりにして「水曜集会の中止と募金禁止」を求め裁判を起こした元慰安婦で、市民活動家が被害者を利用しているということに敏感でした。遺族会も募金活動をしていることに懸念を持ち、挺対協と同じような団体だろうと考えていたようなのです。