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1年後の五輪より“個人の明日” もし私がプロ野球チームの経営者だったら“今週の目標”を打ち出す

池田純「スポーツビジネス・ストロングスタイル」#4

2020/07/22
note

 プロ野球、そしてJリーグと、日本の代表的なプロスポーツのリーグ戦が再開されました。心待ちにしていたファンの方は多いでしょうし、スポーツのある日常が戻ってきたこと自体は喜ばしいことだと思います。ソーシャルディスタンスを保った形ではありますが、スタジアムにも人を入れての開催へとフェーズが進んできています。

人々の心を躍らせるものがめっきり減った

 ただ、私個人の感覚としては、以前のような純粋な盛り上がりまでには感じられない、今は、コロナ以前とまったく同じ社会には戻らないのだな、というのが正直なところです。

 それは、観客のまばらな状況が寂しい、といったような表面的な部分で感じていることではありません。試合の勝ち負けをはじめとしたスポーツ界での出来事が、その競技のファンの枠を越え、世の中の話題になり、活力になる――そんなかつての日常に戻っているようには見えないのです。

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 つい先日、複数のサッカー関係者が、チケットに対するお客さんの感度が想像以上に低く、危機感を覚えている、と話していたことが思い出されます。新型コロナウイルスによる社会不安が広がって以降、スポーツに限らず、人々の心を躍らせるものが世の中からめっきり減りました。

 もちろん、エンタメ業界の動きが大幅に制限されていることの影響も大きいのですが、私はこの閉塞感の原因はそれだけではないと考えています。世の中で話題になる様々な事柄に、「心躍らせたい」という強い意志にもとづく“シナリオ”の存在が感じられないのです。

東京都知事選を興味深く観ていたけれど

 政治の話を持ちだすのは適切でないかもしれませんが、分かりやすい例として、7月5日に行われた東京都知事選を挙げたいと思います。

都知事選 ©︎AFLO

 今回の都知事選では、過去最多、様々な方々が立候補していました。ただでさえ高齢者層をのぞけば政治への関心が低い状況なのに、コロナ禍でより一層の投票率の低さを計算したうえでの立候補だったと思います。既定路線にあるかのような現職小池百合子氏優位の周囲で、政見放送ひとつとっても、実にさまざまな候補が大小の騒ぎをおこしていました。売名目的の方もいたのかもしれません。

 しかし、私はてっきり、このすべての騒ぎは、都知事選の先を見越しての活動であるのだろう、と、選挙期間中考えていました。これだけ泡沫候補が乱立し、さらにコロナでの投票率への懸念も加わると、ただでさえ票が集まりがちな現職を倒すことは難しくなりますから。

 では、都知事選の先にどんなシナリオがあるのだろう? 次の大きな騒ぎをどう起こすのだろう? それが気になって、都知事選の騒ぎを興味深く観ていました。

 しかし、今。

 その先の展開を注視していた私としては、まだ肩すかしを食らっているような気持ちのままです(コロナですし、まだまだまだシナリオの途中なのかもしれませんが、政治へのアンチテーゼを示していくという意味で、期待をしているからこその意見ですので、あしからず)。