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「ノワール」から「犬」を書くまで 新直木賞作家・馳星周さんが語った「40代半ばで起きた心境の変化」

2020/07/17

――このたびは『少年と犬』での直木賞受賞おめでとうございます。受賞の知らせは生まれ故郷の北海道・河浦町で受け取られたそうですが、受賞の感想をお聞かせください。 

馳星周(以下、馳) ありがとうございます。今まで7回候補になったけれど、とりわけ直木賞を意識したことはないし、どっちかというと俺がというより編集者たちが盛り上がるので、編集者たちのために候補作に入ることを受け入れてきた部分がありました。

 今回はたまたま浦河に滞在している時に選考会があって。ここは馬産と漁業の町なんですが新型コロナの影響で町の経済も苦しいし、温暖化のせいで漁業もちょっと影が差している状況なので、今回は獲れたらいいなと思っていましたし、獲れてほっとしているし、本人よりも周りが喜んでいるので、それが嬉しいです。 

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浦河町から取材に答える馳星周さん ©文藝春秋

――昨夜はテレビの取材も入って、地元名産の昆布のブーケをプレゼントされているお姿を拝見しました。周囲にお仲間がたくさんいらっしゃいましたが、会見後はどのように過ごされたのですか。  

 北海道でこういうことってめったにないと思うので、ものすごい数の道内のメディアが来てました。会見の後は食えや飲めやの宴会でした。今回は選考会の時間も早めになったりしたので、15時すぎからすきっ腹で飲んで、17時くらいから食事を始めようと言っていたけれど会見があったので、結局食べられたのは6時半とか7時くらい。8時9時にはベロベロで記憶なくなって、11時くらいには帰って寝ました。 

当時は、大型犬と暮らせるマンションを探すのが大変で

――馳さんは現在、軽井沢にお住まいですが、ここ3年くらいは夏は浦河町で過ごされているそうですね。 

馳 まず、ここは夏が本当に涼しいんですよ。このエリアは夏は1週間くらいしかなくて、その間も気温が30度いくかいかないかくらいで、その1週間を過ぎればまた20度前後に下がるんです。うちは大型犬を2頭飼っているんですけれど、犬たちには最高にいい気候なので、こっちで過ごすことにしています。 

――受賞作『少年と犬』も犬が出てくる物語ですが、実際に犬を飼い始めたのはいつ頃からですか。 

 デビューする前、28か29の時から。ずっと犬が飼いたかったのに親が駄目だと言って飼ってもらえなかったので、大人になったら飼おうとはずっと決めていました。当時はまだ大型犬と室内で一緒に暮らすことがあまり認知されていなかったのか、犬と一緒に住めるマンションを探すのが大変で。なんとか見つけましたけれど。 

『少年と犬』(文藝春秋)

――その頃は東京だったのですね。その後、ずっと同じ犬種を飼われているのですか。 

 そうです。バーニーズマウンテンドッグで、今、4代目と5代目です。なんでしょうね、犬としてはちょっと抜けていて、やることがすごく人間臭いんですよ。すごく面白い犬種だと思います。