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「吉原では1日6~7万稼げていたのに蒲田では2万円」……“夜の街”で働く人々の言い分と懐事情

 コロナ感染再拡大の“震源地”としてやり玉に挙げられている「夜の繁華街」。そこに集うホストやキャバ嬢、風俗嬢は、悪者扱いされ、リスクも高い中で、なぜ働き続けるのか。歌舞伎町や池袋を取材すると、困惑や悲鳴、開き直り……様々な言い分が聞こえてきた。

新宿・歌舞伎町

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「夜の街、夜の繁華街への外出を控えてほしい」

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 2カ月ぶりに都内で新型コロナウイルスの感染者数が100人を超えた7月2日、小池百合子都知事は語気を強めて東京都民に訴えた。

 コロナ第2波の戦犯とされているのが「夜の街」だ。その後、7月3日の都内の新規感染者数は124人、4日には131人を記録。3日の感染者のうち、約半数の58人が「夜の街」で感染したとみられる。

 都はホストクラブやキャバクラなど、接待を伴う夜間の飲食店で感染した人を「夜の街での感染者」と定義している。緊急事態宣言が全面解除された5月25日から7月1日までの、都内の感染者1145人中、「夜の街」関連の感染者は446人。そのうち、日本有数の歓楽街・歌舞伎町がある新宿区が全体の7割を占めた。

 さらに、さいたま市や宇都宮市などのキャバクラでも集団感染が発生。夜の街で何が起きているのか――。

クラスターが発生するのは時間の問題だった

 歌舞伎町で働く現役のホストは、ホストクラブの営業形態そのものが「“3密”を絵に描いたようなもの」だと解説する。

「ホストクラブは二部制になっており、一部営業は夕方から夜中1時頃まで。早番の風俗嬢や一般のOLで賑わい、出勤するホストの数も多い。二部営業は日の出から昼まで。朝方まで働いたキャバ嬢やガールズバーの女の子が泥酔状態で訪れる。いずれもボトルなどを卸すとホスト全員がお客さんの卓を取り囲み、口角泡を飛ばしてマイクパフォーマンスで盛り上げます」

 男女が入り乱れる濃密な空間にクラスターが発生するのは時間の問題だった。

 歌舞伎町の老舗ホストクラブで感染者が出たのは、4月上旬のこと。その後、コロナはキャバクラやガールズバーに波及していく。5月以降、歌舞伎町の高級キャバクラ「A」や池袋のショーキャバクラ「F」などで感染者が発覚したのだ。

「コロナが発生した歌舞伎町のキャバクラは、感染者の濃厚接触者だった同僚キャバ嬢を系列店で働かせるなど、まるで危機感がなかった。緊急事態宣言中でも一切休業せず、フェイスシールドやマスクの着用はおろか、消毒すら行わない“闇営業”の店も少なくなかった」(飲食店関係者)

 休業することなく店を開け続けていたホストクラブ「X」のホストが語る。

「一応、コロナ対策はしていましたよ。シャンパンタワーをフェイスシールド付けたままでやるときは半分ギャグ。客の検温を義務付けているけど、お客さんは泥酔してやってくるので、37度以上の子も少なくない。『あたし、コロナ陽性だよ』という女の子が店内で騒いだりしていて、カオス状態のときもあった」

 6月6日には歌舞伎町でクラスターが発生したと、初めてメディアに報じられる。都が発表した感染者数26人のうち、12人が同じホストクラブの従業員だったことが判明したのだ。