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過去と現在が第6話で交差する神ドラマ『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』に息づく黒澤明スタイル

『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』(アマゾン・プライムビデオ)

2020/07/29
 

「ネット配信で海外の名作ドラマを見たい。でも、下手に手を出すと何シーズンも見続ける羽目になりそうで怖い……」

 そんな方にオススメなのが『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』のシーズン1(全8話で完結)だ。

 数多くの名作ドラマを作る米国HBOで放送されたのが2014年。遅ればせながら昨年、アマゾン・プライムビデオで見た私は「もし、このまま見逃していたら人生損してた……」と己の不明を恥じた。それほどの大傑作である。

 2人の刑事を演じるのは、怪優マシュー・マコノヒーとウディ・ハレルソン。コンビで連続殺人事件の犯人を追う所謂“バディ(相棒)もの”だが、この作品は一味違う。過去と現在、2つの時間がパラレルに進行するのだ。現在のシーンでは、老いさらばえた2人がそれぞれ、地元警察署で刑事から過去の事件について尋問を受ける場面が続く。まるでドキュメンタリーのワンショット・インタビューのような映像だ。しかし、2人の証言はなぜか噛み合わない。一つの事件も、話し手の視点や立場によって“異なる事実”として浮かび上がるのだ。

 こうしたプロットは「羅生門スタイル」などと呼ばれ、海外のドラマや映画脚本によく取り入れられている。その名の通り、黒澤明監督の映画『羅生門』(原作は芥川龍之介『藪の中』)に由来する。

 観客は煙に巻かれ、善悪や真実を見失い、考えさせられる。謎の連続殺人事件にのめり込んだ2人も、やがて深い闇に呑み込まれ、人生を失う。

 物語は寸分の隙なく、緻密に紡がれていく。因縁を抱えた2人の男の時間(過去と現在)は、第6話でついに交錯。そして、怒濤の結末へ向かう。まさに、「8時間の映画作品」とでも言うべき完成度だ。

 監督は日系アメリカ人のキャリー・フクナガ。このドラマを機に、映画『007』シリーズ最新作のメガホンを取った。コロナ禍で延期となった公開が待ち遠しい。

INFORMATION

『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』
https://www.amazon.co.jp/dp/B018DGU5D4

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