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永瀬拓矢叡王VS豊島将之竜王・名人 ロジカルな棋士が、感性と意地をぶつけあった

永瀬拓矢叡王VS豊島将之竜王・名人 ロジカルな棋士が、感性と意地をぶつけあった

第5期叡王戦七番勝負第4局・観戦レポート

2020/07/31

 今期の叡王戦は、7月に行われた第2局が持将棋(引き分け)だったことに加え、7月19日の昼に行われた第3局も続けて持将棋になった。これは史上初のことだろう。

「史上初」だらけのタイトル戦

 そして、これも極めて異例のことだが、第4局は第3局と同日の夜に開催されることになっている。第3局が200手超、18時近くまでかかったことをふまえ、当初19時開始予定だった第4局は、1時間半の休憩を挟んで19時半からとなった。タイトル戦のダブルヘッダーも、史上初のことだ。

二人とも、将棋電王戦の出場者という共通点がある ©文藝春秋

 私たちは19時15分に対局室に入った。豊島将之竜王・名人、永瀬拓矢叡王の順に入室するのを記者たちと見守る。先後が入れ替わり、第4局は豊島竜王・名人が先手番となった。

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 開始時の取材を経て、控室に戻ると、第3局と同様に、また20手以上すすんでいる。二人とも指し手が早い。

25手目、▲3五飛車まで(ニコニコ生放送より)

 立会人の森内俊之九段に話を聞くと、「先手になった豊島さんが相掛かりを打診したら、永瀬さんがそれを嫌って、結局、横歩になった形ですね」と言う。前局と同じように、永瀬叡王が自分の研究範囲に引きずり込むパターンになりそうだ。

 2二にある歩が目につくが、これは最近の流行形なのだという。この先に出てくる変化で、あらかじめここを受けて安全にしている。そのかわり、将来この筋に歩を使って攻めることができなくなる。

機械が自分の思った通りの動作をしてくれる!

 私はもともと編集者だ。子供のころ、そんなに体が強くなかった私は、本の世界に引き込まれた。自分の経験したことのない話が書かれているし、世界中の人々の想いがそこにはつまっていた。

 本が好きなのは大人になっても変わらなかったので、仕事中に読書してもいいところに就職しようと思い、消去法的に選んだのが出版社だった。編集者というのは、著者のメッセージの発信を手伝う仕事で、意外と自分の性にあっていたのは運がよかったと思う。

 もうひとつ、子供のころから好きだったものがある。それは、コンピュータだ。最初に買ったパソコンは、NECのPC-6001という機種だった。プログラムを書くと、機械が自分の思った通りの動作をしてくれる! 小学生だった私は夢中になった。

 いま私は、noteというウェブサービスを運営する会社を経営している。noteは、コンテンツやそれを生み出すクリエイターに、テクノロジーの力を借りて、羽ばたくための場所を提供するサービスともいえる。自分自身の、本とコンピュータという2つの趣味が、いまの事業に大きく影響しているのはまちがいない。