2020年上半期(1月~6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。裁判部門の第4位は、こちら!(初公開日 2020年3月14日)。
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「なぜ彼はこんなに堂々と否定できるのか?」
法廷内のほとんどの人々に違和感を抱かせるのは、千葉県野田市で栗原心愛(みあ)ちゃん(当時10)を虐待死させたとして起訴された、父親の勇一郎被告(42)だ。2月21日からの千葉地裁の裁判員裁判で、虐待を示す数々の証言に抗っている。
勇一郎は傷害致死罪を「争わない」としながらも、冷水を浴びせたり床に打ち付けたりといった多くの暴行を否定。一方で入退廷の際には深々と頭を下げるなど、反省の態度を見せている。
「検察官が苛立ちを見せながら『誰のために頭を下げているのか』と問うと、『心愛のためです』と。さらに『本当に謝罪するつもりがあるのか』と迫ると『あります』と答えていた。それでいて、心愛ちゃんが『お父さんにぼう力を受けています』と書いた小学校のアンケートは『心愛が嘘をついたと思う』と強弁するのです」(全国紙記者)
証人として虐待内容を説明した勇一郎の妻や妹、児相職員らの証言も否定。
「学校の教諭らに『保護が解除されたのは暴力がないという証だろう』などと威圧的に迫ったことも明かされましたが、モンスターペアレントとの認識は『ない』という。自分をあくまでもかばう発言に、誰もが呆れていました」(同前)
3月6日の最後の被告人質問では、6人いる裁判員のうち5人が「心愛さんに何を謝りたいのか」「あなたは証人から陥れられているということか」と首をかしげながら問いただした。「どうすれば亡くならなかったと思うか」という質問には「私の実家にいれば、こんなことにはならなかったかも」などと答えていた。