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記憶をなくした夫が妻に再びプロポーズ! 終末期病棟の奇跡のラブストーリー

『お別れホスピタル』より

“ゴミ捨て場”と陰で呼ばれる「終末期病棟(ターミナル)」に入院する患者たちと、その病棟で働く看護師を描く『お別れホスピタル』。大ヒット作『透明なゆりかご』で知られる漫画家・沖田×華氏が「週刊スピリッツ」にて月イチ連載している病院コミックです。看護師資格を持つ沖田氏が、医療従事者への取材をもとに構成したこの作品には、超高齢化社会の今だからこそ読むべきテーマが散りばめられています。

雑誌掲載時に大きな反響を呼んだ“神回”

 回復が見込めず、死が間近に迫る様々な患者と家族のドラマは、誰もがいずれは迎える“自分の死”というものを改めて見つめ直すきっかけを与えてくれるでしょう。

 今回、掲載するカルテ18は「担当編集がネームの時、校了の時、雑誌掲載の時、単行本の時と4回泣いたという回です。私自身もとても好きなお話です」と沖田氏は語る。認知症患者である山下弘明さんとその妻・美幸さんを描き、雑誌掲載時に大きな反響を呼んだ“神回”だ。

 お話の始まりは、25歳の山下さんの目線で始まり、自分がなんの病気で入院しているかは分からないが、独身の会社員で従姉妹のアユミちゃんがよく看病に来てくれていると思っています。そして折り合いが悪い母親が見舞いに来ることに怒っているのですが、何かしら違和感を覚えている山下さんの様子が描かれます。

美幸さんはひたすら夫に拒絶されている

 そこで視点が変わって現在になるのですが、山下弘明さんは73歳の患者であることが分かります。彼は51歳から若年性認知症を発症して、3か月前に末期の肺ガンが見つかり、終末期病棟に入院してきたのです。しかし山下さんの目からは、看護師の辺見が従姉妹のアユミに、妻の美幸さん(70歳)が嫌いな母親に映っているため、美幸さんはひたすら夫に拒絶されているのです。

 
 

 山下さんは骨と脳にも転移があって、痛みは日増しに強くなっていて、医師の見立てでは余命1か月持たないだろうと宣告されています。そのような病状ですが、ある日、現れた女性をアユミの友達と思い込みます。