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「今さらだけどキミの名前を教えてよ」

 アユミの友達に好意を持ち始めた山下さんは、彼女が来ることを心待ちにし始めます。しかしながら、その実体は、妻の美幸さんでした。髪を切ったせいで初めて会った人だと、山下さんは思い込んでいるのです。一方、美幸さんは、認知症になる前のやさしかった山下さんが戻ってきたようだと喜びます。

 そして山下さんは、美幸さんに映画に一緒に行こうと誘うのです。

 その翌日、山下さんの容態は急変します。慌てて駆けつけた美幸さんに向かって、「そういえば、今さらだけどキミの名前を教えてよ」と言う山下さん。長年、連れ添った夫から名前を聞かれた美幸さんは「山下美幸と言います」と自分の名前を名乗ります。それに対して「初めてキミを見た時からステキな人だなって思ってたよ」「だから一生のお願いだ。退院したらボクと一緒に住んで欲しい。結婚して欲しいんだ」とプロポーズをするのです。

 
 

 驚きながらもその言葉を受けとめて、「はい」と答える美幸さん。その日から顔を合わせるたびに弘明さんは美幸さんにプロポーズをして、毎回、美幸さんは嬉しそうに承諾します。そして1週間後――。

 痛みがひどくなった山下さんはモルヒネを処方されて、眠るように息を引き取ります。そして美幸さんの心の中に視点は飛びます。約束を果たせなかった映画館でふたりで映画を観ながら、美幸さんは山下さんに語りかけます。「あなたが認知症になってから、神様っていないと思ってたの」「でもやっぱり神様はいたのね…」「最期にこうやってちゃんとつじつまを会わせてくれたもの」と。

 
 

 このカルテ18は『お別れホスピタル』単行本第3集に収録されています。

沖田×華
1979年2月2日、富山県魚津市出身。ペンネームは「起きたばっかり」に由来。2005年デビュー。代表作はNHKでドラマ化されて、第42回講談社漫画賞少女部門を受賞した『透明なゆりかご』。 自身が抱える発達障害を題材としたコミックエッセイも人気を集める。

お別れホスピタル (3) (BIG SPIRITS COMICS)

沖田 ×華

小学館

2019年10月11日 発売

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