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助っ人は「エロトーク大好き」の60代女性

 金集めが全国に広がったのは、“プロ”が加わったからと見られる。1人は、某ネットワークビジネスの上位会員だった茨城県在住の女性(60代)。「神秘的な話」「裏情報」「エロトーク」が大好きという女性は、自身で金を出した上、「王見さんはローマ法王とエリザベス女王から、次に日本を支配する人と認められたんです」と吹聴し、出資を募りはじめた。 

 勧誘された1人が、「王見さんは東横インとかアパホテルに泊まっていると聞きました。なんで王様がアパホテルに泊まるんですか?」と聞くと、「みんなのお金を預かって日本を救うので、贅沢はできない。感動するわ!」と言い放っている。 

画像はイメージです ©iStock.com

父親は刀剣の鑑定士

 王見被告は1953年生まれ。高校卒業まで広島県の山間部で育ち、77年に皇学館大学文学部国史学科を卒業した。 

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 2014年、木造2階建ての実家は、父親の名が書かれた古い表札が付いたまま廃屋同然になり、窓ガラスは割れ、室内は家具や荷物が散乱していた。しかし電話は繋がり、掛けると室内から呼び出し音が聞こえてきた。 

 近所の同年代の男性の話。 

「お父さんは刀剣の売買と鑑定をしていて、家の中に日本刀とか軍刀がたくさんあり、庭の柿の木の下で竹刀を振っていました。お父さんが亡くなってお母さんが1人暮らしになった後、強盗が2回入り、刀はごっそり盗まれました。お母さんはその後施設に入り、家は無人に。王見さんは高校卒業後に家を出て、何をしているのか分かりません。時々、『わ』ナンバーのレンタカーで帰って来ますが、挨拶もありませんし」 

王見家の様子(著者提供)
王見家の様子(著者提供)

名字について聞かれると「私は高いところの者ですよ」

 広島県で建設業やパチンコ屋を展開していた男性は、90年代に知人に王見被告を紹介され、ほぼ10年に渡り1回50万、100万円と王見被告に金を貸し続けた。 

「王見さんは独身で定職に就いておらず、『困ったことで……』と言って金を借りに来た。あっちへ借り、こっちへ返しを繰り返していたようです。実家に行くと、旧家のお嬢様といった感じの母親が王見さんに寄り添っていた。母親が甘やかし過ぎたと思いました。温厚で、人柄は悪くないし、ついつい同情してしまいましたが、ほぼ全額回収不能。巧妙だったのかもしれません」 

 金を貸し始めた頃、“王を見る”と書く名字が珍しく、「どこの出?」と聞くと、王見被告は「私は高いところの者ですよ」と応えたという。 

 その後、王見被告は上京して共謀者らと知り合い、金集めをはじめたと見られる。