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村上隆、草間彌生、奈良美智……現代アート界の“6人のスター”が示す「真のオリジナリティ」とは

村上隆、草間彌生、奈良美智……現代アート界の“6人のスター”が示す「真のオリジナリティ」とは

アートな土曜日

2020/08/22

 これはまさに展名の通り、現代アート界を代表する日本のスターたちが集結した展覧会。東京六本木、森美術館での「STARS展:現代美術のスターたち――日本から世界へ」である。

奈良美智の展示

スターたちの作品が空間に緊張感をもたらす

 選りすぐりの6人の「スター」は、それぞれが広大なスペースを受け持ち、初期作から代表作、新作までを惜しげなく見せてくれている。会場を順に巡っていこう。まず登場するのは、村上隆である。

 広い空間に屹立していて来場者の目を奪うのは、巨大な鬼の彫像。東日本大震災に呼応してつくられたものだ。身体は異様にゴツいが、顔は怖さの中にも多少の愛嬌を含むか。

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 他にも立体物は並んでいて、《ヒロポン》《マイ・ロンサム・カウボーイ》といった作品は1990年代の創作である。アニメやフィギュアなどサブカルチャーのテイストをベースにしてあるのは、西洋からの借り物の思想ではない日本のリアリティを追求しようとしたからだったろう。

村上隆の展示

 壁の一面を覆う《チェリーブロッサム フジヤマ JAPAN》は新作。山肌に笑顔を貼り付けたポップな富士山の姿が、かわいらしく見えたり不気味に思えたり、観る側に複雑な感情をもたらす。

 続く空間では、李禹煥が作品を展開する。球体や棒状の物体がゴロリと置かれていたり、壁面にはごくシンプルな形態を描いた絵画が掛けられていたり。そこから意味のようなものを読み取るのは難しいけれど、何か張り詰めたものが漂っているのは強く感じられる。

 おそらくはモノ同士の関係性が、至極繊細に考えられた上で配置がされているゆえ、場に緊張感が生じている。一貫して「関係項」という考え方を重視し続けてきた李だからこそ為し得る表現だ。

李禹煥の展示

 また李は、「作らないこと、描かないこと、あるいは他者や外部を表現に導入することに力を注いできた」とも述べる。なるほど自然と人為の関係もよく見据えながら、李の創作はおこなわれてきたのだろう。

 歩を進めると、眼に眩しい色合いと細かい装飾に覆われた、立体物や絵画が並ぶ空間が現れる。草間彌生の展示だ。

草間彌生の展示

 表面に無数の突起を持つ「ソフト・スカルプチュア」と呼ばれる立体作品や、網目状の模様が延々と続く「ネットペインティング」と名付けられた絵画は、作家本人がずっと抱いてきた強迫観念を端的に表した表現であるという。たしかにそれら作品と対峙しているだけで、差し迫った何かにのしかかられるよう。知らず肌が粟立ってくる。