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何をしたら“有罪”?周庭さんたちはどうなる?………国家安全維持法の「恐ろしさ」とは

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genre : ニュース, 社会, 経済, 国際, メディア

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もし周さんらが有罪判決を受ければ、「海外勢力との結託」の法定刑である3年以上の懲役、最高で無期懲役という重い刑が科せられることになる。

香港地方選出馬を目指す民主活動家を応援する周庭さん(2019年9月)

中国本土で裁かれる恐れも

一方、「リンゴ日報」の黎氏をめぐっては、一部香港メディアは黎氏が中国本土に身柄を移送される可能性があるとの有識者の見方を伝えている。

 

国家安全維持法では、原則は香港の当局が捜査を行い、香港の裁判所で司法手続きが取られるが例外もある。第55条には「外国が介入する複雑な状況」などが生じた場合、中国の出先機関・国家安全維持公署が管轄権を行使すると明記されている。その場合は、中国の刑事訴訟法に従って、中国の裁判所で司法手続きが行われることになる。

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中国本土では国家政権転覆罪などで拘束された人権派弁護士などが不当な長期拘束や拷問を受けているといった指摘が相次いでいる。もし第55条が適用されると、司法手続きや身柄の扱いがより不透明になる懸念がある。ただし、黎氏本人は「逮捕や取調べに関わった警察官は全員香港人であり、現段階では本土に送られることはないと信じている」との見方を示している。

何が罪になるのかわからない…国家安全維持法の恐ろしさ

国家安全維持法はできたばかりの法律で裁判の判例もないため、何をしたら有罪になるのかまだよくわからない。何が「国家分裂」にあたり、何が「海外勢力との結託」にあたるのか当局側が恣意的に運用する恐れがある。つまり、当局に都合の悪い人物は何らかの理由を付けて逮捕できる恐ろしい法律なのだ。

法解釈もその時々の政治状況によって左右され、過去の行動も問題視されかねない。得体の知れなさが新たな恐怖を生み、多くの香港の人たちは政治的な発言を控えるようになっている。今回、著名人が逮捕されたことも、民主派にとっては大きな圧力となっており、それこそが中国の狙いだとも言える。

 

それでも周さんら民主派の多くは「今後も戦い続ける」と決意を明らかにしている。黎氏逮捕の翌日、香港では多くの人がリンゴ日報を購入し抗議の意志を示した。日本でもSNS上で周さんの解放を求める声が広がり注目を集めた。香港は今後どこに向かうのか。周さんら民主派が今後どのような扱いを受けることになるのか、国際社会全体が目を光らせていく必要がある。

【執筆:FNN北京支局長 高橋宏朋】

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