『ROCK ACADEMIA』(GLAY)/『HELLO』(Official髭男dism)
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『ROCK ACADEMIA』を初めて耳にしたとき、えっ! これホントにGLAYなの? と思ってしまった。(ひとことでいうのなら)やけに屈託のない音だったからである。
過去のシングルすべてを聴いてきたのではないが、それなりに彼等の歴史を見渡せば、やはり“耽美”というのか、どこか、影のある印象が強い。
そういう世界とは、イメージ随分違うなぁ、という訳だ。
まずイントロでビックリした。いわゆる“オーケストラヒット”通称オケヒットと呼ばれる、80年代にトレバー・ホーンのプロデュースでお馴染みとなった、サンプリング音の“応酬!”だったのだ。ある意味今一番古臭い匂いのする音色ともいえるだろう。それを「あえて使っている」のは聴けば一目瞭然にせよ、こうした“遊び”は彼等の美学にはないものと決めこんでいただけに、結構面食らった。
ところでこんなご時世、音楽家は、勿論私を含めてだが、暇で暇でどうしようもない毎日だ。ただ、だからといって曲作りがはかどるのかといえば、それはまた別の話。なかなか気持ちの集中もつかず、只々無益に時を過ごしてしまう日々なのは俺がいい見本だ。
いかん、そんなことでは! と、一念発起し、老骨に鞭打ち、なんとか『PANDEMIC~WHO is criminal ? ~』という曲を書き上げてみた。
結果コレが映像も含め、我ながら本気でいい出来なのよ、いやマジ。騙されたと思って、一度是非YouTube見てやって下さいませな、無料(タダ)ですんで。おっとドサクサに紛れて宣伝しちゃいましたァ(笑)。
閑話休題。
GLAYにしてもこんな時に新曲だ。きっと通常とは違う気合い/根性が入っていた!? のかどうかはわからないが、何だかこの曲の制作には、聴くひと達に元気を与えたい!といった強い動機のあるのを、私は感じてしまった。
まぁ、そのへんのことはあくまで個人的な推察/感想なので、適当に聞き流していただいて構わないのだが、この曲のサウンドの明るさというのが、近頃のjpopには稀なものなことだけは断言出来る。
私は、毎週毎週、こうして原稿を書くために新曲を聴いている訳だが、年を追うごとの傾向として、陽気な気分にさせてくれるjpopは本当に少なくなってきている、と実感するものなのである。
例えて申せば、夏休みといえば、かつては、スチャダラパーやらORANGE RANGEやらが、あの眩しい青空を見上げた時の心のざわめきを、見事音楽にして残してみせてくれた。そんなことがやたらと遠くに思えてしまうのも致し方のないのが2020年の夏なのだろうが、このサウンドに身を委ねると、今もどこかであの頃とつながっているんだなぁ……という思いにさせられる。それは悪くないものだ。
Official髭男dism。
聴けばそれとわかる、ピアノを中心としたサウンド体系は、ますます揺るぎないものとなった。ここからどんな展開をしてゆくのか、興味深い。
今週のWHO「本文でも書いた新曲“PANDEMIC ~WHO is criminal ? ~”、十代のオレにロックについて教えてくれたAlan Merrillに捧げている。この3月にニューヨークで新型コロナに感染して亡くなった彼も、初動さえ間違っていなければ、死ななくて済んだのではという思いがどうしても拭えないんだよね」と近田春夫氏。「そんな思いを込めた力作だよ」
ちかだはるお/1951年東京都生まれ。ミュージシャン。現在、バンド「活躍中」や、DJのOMBとのユニット「LUNASUN」で活動中。近著に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。近作にソロアルバム『超冗談だから』、ベストアルバム『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』(ともにビクター)がある。
