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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

緒方純子のおい(当時5歳)殺人の嫌疑を否認する松永太の言い分とは

完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #25

2020/09/22

genre : ニュース, 社会

 本件当日、純子は、義兄である緒方隆也(仮名、佑介くんの父=当時38)の死体解体の後片付けのため、緒方花奈(仮名、佑介くんの姉=当時10)と本件被害者である緒方佑介を連れて、午後6時半ころ、『東篠崎マンション』から『片野マンション』に出かけた。その夜遅く、自分は、『片野マンション』から帰ってきた純子から「首を絞めて佑介を死なせた。殺す気はなかった。自分と花奈が佑介の首を絞め、甲女が佑介の足を押さえて3人でやった。」と聞いた。花奈からも「純子が佑介を殺した。」と、純子のことを呼び捨てで言うのを聞いた。甲女からも、「おじちゃん、私は足を持っとっただけやけん。」と言うのを聞いた。

 自分は、純子に佑介を殺すように指示・命令は一切していないし、佑介を殺そうという動機もなかった。佑介は利口な子で、緒方家の跡取りでもあり、通電などで虐待したことは一度もない。佑介は、いずれ隆也の実家(婿入り前の苗字)に戻す際に養育費の名目で金が取れるかもしれないし、そんな佑介を殺す気はなく、死んでくれればいいなどと思ったこともない〉

 このように佑介くん殺害への関与を松永は否認する。さらには松永の嫌疑がないことの理由の一つとして、“アリバイ”が存在することを主張している。

第1の理由:“アリバイ”がないとはいえない

〈被疑者(松永)が当時『東篠崎マンション』に住んでいたことは、本件当時『片野マンション』が死体解体作業の場所となっており、死体解体作業そのものには被疑者は関与していないこと、『東篠崎マンション』の光熱費、水道料金等が相当額に及んでいること、『東篠崎マンション』で撮った子供の誕生祝等の写真の存在などの裏付けにより、検察官も被疑者のこの点の弁解を排斥できないと考えているようである。

 仮に、純子が殺害行為に及んだものであるとしても、その方法に顕著な計画性は窺われず、むしろ一時の感情や思い付きによる場当たり的な犯行であったとみる余地も多分にある。そのような場当たり的な犯行であれば、被疑者が本件現場に居たのか否かという点は、共謀の成否に決定的な影響を及ぼすと考えられるのであって、被疑者にアリバイがあることは、被疑者の嫌疑をかなりの程度否定する方向に働く事情であるといわなければならない〉

(写真はイメージ) ©️iStock.com

 松永弁護団としては、検察側は松永のアリバイがないとは明確にはいえない、ということを主張し、“証拠不十分”であることを訴えようとしていることが想像される。