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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

「白い人魂が動いていった」松永が主張する“スピリチュアルな”取り調べ

完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #26

2020/09/22

genre : ニュース, 社会

取り調べで「般若心経を渡されて……」

 続く2月14日の松永弁護団による定例会見では、最近の取り調べの様子についての説明がなされた。以下弁護士の発言である。

「最近は取り調べのなかで、いろいろな絵を描かされているようです。たとえば由紀夫さんの足、ふくらはぎに痒疹(吹き出物)が出来ていたらしいんですが、その絵を描かされています。あとは、由紀夫さんが段ボールの上に膝をついて這っていた際の絵だとか、由紀夫さんと少女が使っていた2段ベッドの絵だとか……」

 さらに弁護士は、取り調べにおいて、松永を怖がらせることで、動揺させる方法が取られているのではないかとの疑義を呈す。

「昨日、いや、一昨日かな、調べのなかでおかしなことがありました。我々としては偽計による調べではと思うようなこと。それは、松永さんが検察官から『あなたの左に女性の顔が見える』とか、あるいは『白い人魂が動いていった』と言われているようなのです。そんな話をしたときに、いきなり調べ室の換気扇が誰もいじってないのに動き出したそうです。それで検察官が怖がって調べが進まなかったということでした。

 これには伏線があって、それと同じ頃、警察の調べが午前中にあって、そこで松永さんは般若心経を渡されて、勉強しているんだそうです。そのためあまり取り調べはやっていない状況だとか。取調官が言うには、『お釈迦の教えを実践してもらえれば、死刑だろうが無期だろうが……』とか、『お前は妖怪。真人間になれ。そのために般若心経をやれ』と言われたらしく、一応、松永さんは応じているそうです」

(写真はイメージ) ©️iStock.com

 こうした心理的な揺さぶりが実行されているというのだ。弁護士は続ける。

「調べ官から『夜中にうなされたり、寝付けないことはないか?』と聞かれるそうで、『そんなことはまったくない』と言っているそうです。また同様に『死刑は怖くないか?』と聞かれ、『怖くない。やってないから』と。逆にいえば、捜査一課も松永さんを攻める材料がない。つまり証拠がない。そこでなんとか精神的に動揺させて、自白させようとしているのではないでしょうか。やってなくても、やったような気になる危険性もあります。そういう点で、必ずしも適切な調べが行われているかどうか疑問です」

 今後、由紀夫さん事件での起訴、さらには残り2件の事件の逮捕、起訴で、前年3月に始まった捜査は終結すると見られている。そうしたなか、すでに先々の公判を見越した心理戦は、すでに始まっていたのだった。

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