新型コロナウイルスは積年の手配犯の気力すら挫くようだ。警視庁は9月3日、不良グループによる殺人事件に絡む逮捕監禁容疑で、約17年間、南アフリカに潜伏を続けていた紙谷惣容疑者(46)が帰国したのに合わせ、逮捕した。
警視庁担当記者の話。
「紙谷の同居人が新型コロナに感染した上、生活にも困窮して家賃が払えず、大家とトラブルになって現地の日本大使館に8月下旬から相談していたようです。南アでは、世界で6番目に多い62万人超の感染が確認されている。本来なら捜査員が現地に赴いて同じ飛行機に乗って逮捕しますが、コロナで飛行機も満足に飛ばないような状況です。異例なことに本人が1人でドーハ経由で帰国し、成田で身柄を確保されました」
事件は語るだに凄惨だ。紙谷らは2003年9月、元飲食店員の古川信也さん(26・当時)と別の男性を車で拉致し、埼玉県内のマンションに監禁。その後、山梨県内のキャンプ場で首を絞めて殺害し、バラバラに刻んで山梨県や奥多摩町の山中に捨てたのだ。紙谷は飲食店などで使われたクレジットカード情報を盗んで使うスキミンググループの1人で、古川さんはスキミングへの協力を断ったことから殺害されたという。
だが、紙谷に犯行を指示した“首謀者”は別にいる。同じく南アに逃亡した松井知行容疑者(48)だ。
「松井は関東連合グループとも仲が良く、半グレの先駆け。スキミングなどを手がける犯罪集団のトップで、新宿で起きた別の殺人事件に関与した疑いでも国際手配されています。南アに逃亡後も10年のサッカーW杯にかこつけたチケット詐欺事件を主導。被害総額は約1億円で、一部は逃亡資金に充てられたと見られていますが、この詐欺事件でも手配中です」(同前)