昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載ネット秘宝を探せ!

“当て書き”はなぜ役者だけでなく物語も成長させるのか

2020/09/13
 

 傑作ぞろいのネットフリックス・オリジナルドラマ。中でも絶大な人気を誇るのが、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(シーズン1~3配信中)だ。新シリーズが配信されると、全米では社会現象が巻き起こる。ところが、日本での盛り上がりはイマイチ。『全裸監督』は見ても世界を席巻するジュブナイル・ドラマは見ないなんて勿体ない!

 物語の舞台は、米国のある小さな街。主人公は地元の少年少女。彼らが謎の事件に巻き込まれていくSFホラーだ。シーズン1ではウブな彼らも、シリーズが進むごとにグングン成長し、思春期を迎え、恋愛もする。まるで懐かしのドラマ『北の国から』のようだ。

 このシリーズ最大の魅力は、“当て書き”の妙にある。つまり、予(あらかじ)め演じる役者が決まっていて、脚本を練り上げていく手法が実に巧みなのだ。製作・脚本・監督を務めるダファー兄弟はドラマ番外編の座談会の中で、元々予定していたストーリーや設定を、出演者の個性や成長に合わせて変更したと明かした。例えば、シーズン1で“スカしたイケメン”だったスティーブは、シーズン3ではすっかり“心優しきオタク青年”へと様変わりしている。演じる若手俳優ジョー・キーリーは、座談会に参加した様子を見る限りイケイケタイプではない。控えめな好男子だ。本作の登場人物が魅力的なのは、当て書きによって引き出された俳優陣の“素”の部分がストーリー展開と呼応して見事なアンサンブルを奏でている点にある。

 このドラマを見ていると、ストーリーとは別に「作り手が面白がって作っている様子」も伝わってくる。劇中には、ダファー兄弟が思春期に好きだった80年代の名作サンプリングが溢れている。『E.T.』『スタンド・バイ・ミー』『グーニーズ』『エイリアン』など見覚えのある表象があちこちに。まるで彼らの“おもちゃ箱”のような作品である。

INFORMATION

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』
https://www.netflix.com/jp/title/80057281

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー