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「ショート2万、朝まで4万。置屋ではママが…」“ヤバい島”の実態を元ヤクザが赤裸々証言

『売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』#2

2020/09/20
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 今も公然と売春が行われ“売春島”と呼ばれている三重県の離島・渡鹿野島――。「ヤバい島」として長くタブー視されてきたこの島の実態に迫ったノンフィクションライター、高木瑞穂氏の著書『売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』(彩図社)が、単行本、文庫版合わせて9万部を超えるベストセラーになっている。

 現地を徹底取材し、夜ごと体を売る女性たち、裏で糸を引く暴力団関係者、往時のにぎわいを知る島民ら、数多の当事者を訪ね歩き、謎に満ちた「現代の桃源郷」の姿を浮かび上がらせたノンフィクションから、一部を抜粋して転載する。

(全3回の2回目。#1#3を読む)

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売春婦たちが暮らしたアパート(著者提供)

◆◆◆

元暴力団組員が語った人身売買の実態

 ここに、一人の男がいる。元暴力団組員の、X氏。人物の特定を避けるため、名前や年齢、組織名などは伏せさせていただくが、かつて、この“売春島”で人身売買ブローカーとして名を馳せ、約2年で1億ほど稼いでいた人物だ。

 Xとは、ある暴力団幹部を通じて知り合った。低姿勢なうえ、顔つきも温和だが、大柄でがっしりとした骨格とサングラスの奥から覗く鋭い眼光からは、長年、裏街道を歩んできた凄みが滲みでていた。Xの住む関西某所の喫茶店の片隅で、話を聞いた(※一部、後の取材で本人や別の取材対象者により否定された部分が含まれている)。

観光客を出迎える島の看板(著者提供)

 この商売に手を染め始めたのは、1997年頃のこと。Xは才覚のある暴力団組員として既に、ある程度の地位を得ていた。

 きっかけは、“売春島”に女を送り込んでいた広域暴力団組織配下のA組、その現役組員からの紹介だった。自分でもこれほど稼げるシノギだとは考えもしなかったと話す。

「最初に入れたのは大阪でナンパした20才の女だった。女を置屋に入れるにはA組の姐さんの口利きがないとダメで、その姐さんに口を利いてもらって。姐さんは、提携する渡鹿野島のBホテル配下の置屋の面倒を見ていた。いわゆるミカジメ関係だね」