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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

2020/10/06

genre : ニュース, 社会

 この第1のなかに出てくる“余事記載”とは、罪となるべき事実以外の記載という意味。つまり、“殺人”の容疑で逮捕された松永らが、由紀夫さんに対する「自由を制約するなどして自己らの支配下に置いていた」行為が、“殺人”の実行行為に当たるのかとの疑問を呈し、もしそうでないのならば、“余事記載”ではないかと主張。それが違うのなら理由を説明するように要求しているものである。

 続く第2は、由紀夫さんの死因である「多臓器不全」が、“殺人”の直接の死因であるかどうかを問うもの。こちらも、多臓器不全を引き起こしたことが、“殺人”となり得るのか、さらには、もし間接的な死因と捉えるのならば、より“殺人”からは遠ざかるのではないかということを示唆している。

 最後の第3、第4は、本件での“殺人”の実行行為はなんであるかを明らかにさせようというもの。「医師による適切な治療」を受けさせなかった、「その生存に必要な十分な食事」を与えなかった、「身体の保温に十分な寝具及び暖房器具」を与えなかった、などの不作為(やらなかった)とされる行為を、“殺人”の実行行為であると捉えるのならば、それらの不作為とされる行為を“やらなければならない”根拠となる法的義務を、示す必要があると主張するものである。

北九州連続殺人事件をめぐる人物相関図 ©文藝春秋

裁判長は「明確性は現時点で十分」

 これらの釈明要求に対して、2回目となる勾留理由開示公判が、2月20日に福岡地裁小倉支部で開かれた。

 その席で裁判長は、「犯行時、現場にいた関係者の供述などから相当な嫌疑が認められる。共犯関係や犯行態様からきわめて重大な事案であり、通謀などの証拠隠滅の恐れや、住所不定に加え、その家族関係などから逃亡の恐れがある」との拘置理由を述べた。

 さらに松永弁護団による「釈明要求書」については、「明確性は現時点で十分」として、釈明は認めなかった。

 この公判では松永が意見陳述を行っている。その概要は次の通りだ(カギカッコ内は松永の陳述)。