松永太弁護団による、勾留理由開示公判が開かれた翌日となる2003年2月21日には、同弁護団と緒方純子弁護団の会見がそれぞれ行われた。
松永弁護団は前日の公判について、裁判所が釈明に応じなかったことへの不満を表明した。そのうえで、起訴の判断を待つ状態にある、広田由紀夫さん(仮名、当時34)に対する事件について、「起訴されるのだろうけど、当然、争うことになる」と述べている。
緒方弁護団2回目の会見、食い違う主張
一方、これが2回目となる緒方弁護団の会見では、これまでに殺人罪で起訴された4事件のうち、緒方のめいである緒方花奈ちゃん(仮名、当時10)と、おいの緒方佑介くん(仮名、当時5)の事件について言及。花奈ちゃんについては、「(起訴状にある)すのこに縛り付けての通電はしていない」ということを、佑介くんについては「全面的に容疑は認めるが、凶器は電気コード」だという緒方の主張を訴えた。また、佑介くん事件においては、「松永から指示はあったが、松永は実行行為はしていない」とのことだった。
さらに、起訴前の由紀夫さん事件についても触れ、「逮捕時の認否で『なにも言えない』としたのは、死因について違うところがあるということ。面を食らったのではない」とし、「風呂場で転倒したこと自体は否定しないが、頭を打って死んだ、というのとは違う。事故死という認識はない」と、松永の主張とは異なる見解を明らかにしている。
2日後に、広田由紀夫さんに対する殺人罪で両名を起訴
この会見の2日後となる2月23日、福岡地検小倉支部は、広田由紀夫さんに対する殺人罪で松永と緒方を起訴した。起訴事実の要旨は以下の通りだ。
〈被告人両名は、かねてより北九州市小倉北区片野所在の『片野マンション』(仮名)30×号室において、知人の広田由起夫(当時34)をその自由を制約するなどして自己らの支配下に置いていたものであるが、平成8年1月上旬ころには、同人が肝機能障害ないしは腎機能障害等により身体がやせ細り、四肢には多数の痒疹が生ずるなど医師による適切な医療を要する状態に陥っていたところ、被告人両名は、共謀の上、殺意をもって、そのころから同年2月26日ころまでの間、同人を同室内の狭あいな浴室に閉じ込めるなどした上、その生存に必要にして十分な食事を与えず、長時間の起立あるいはそんきょの姿勢をとること、また、厳寒の時期にもかかわらず、身体の保温に必要にして十分な寝具及び暖房器具を与えることなく同浴室の洗い場で就寝することを強制し、さらに、同人を木製の囲いの中に入れるなどして、その腕部に電気コードの電線に装着した金属製クリップを取り付け、同電気コードの差込プラグと、電圧100ボルト、電流30アンペアの家庭用交流電源に差し込んだ延長コードの差込口とを接続して同人の身体に通電させたり、その身体を殴打、足蹴にするなどの暴行を加え、これらの虐待行為を継続的に繰り返すなどにより、上記肝機能障害ないしは腎機能障害等を悪化させるとともに同人を衰弱させ、よって、同日ころ、上記マンション30×号室において、同人を上記障害等による多臓器不全により死亡させて殺害したものである。
罪名及び罰条
殺人 刑法第199条、第60条〉