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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

“死体なき殺人事件” 北九州監禁連続殺人事件の捜査はなぜ難航したのか

完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #28

2020/10/06

genre : ニュース, 社会

 彼らの逮捕はこれで9度目。弁解録取書で松永は「殺していないし共謀もしていない」、緒方は「その通り間違いありません」と答えている。

 この逮捕から3日後の2月28日に開かれた松永弁護団の定例会見では、逮捕後に接見した際の松永の発言が伝えられた。弁護士は次のように言う(一部を抜粋)。

「松永さんとしては、(智恵子さんを)殺していない。指示もしていない。殺そうと話し合ったこともない。殺そうと思ったこともない」

「松永さんは、隆也さん(仮名=智恵子さんの夫)から『自分が殺した』と聞いた。純子さんも殺害現場にいたが、後から『私は(隆也さんを)止めたんだけど』と聞いた、と」

「捜査当局、とくに検察は、松永さんが実行行為に関与していないことは認めており、むしろ共謀について追及されている。『嘘でもいいから認めろ』と……」

「警察情報で(智恵子さんを)監禁していたと流れるかもしれないが、松永さんは智恵子さん、隆也さんに対して監禁はしていない」

©️iStock.com

「夫婦は離婚を考えていた」松永の検証不可能な説明

 その他にも、智恵子さん殺害の前年である1997年秋頃に、隆也さんと智恵子さんが夫婦喧嘩をしており、隆也さんが智恵子さんの首を絞めたりしたことがあったという。彼らは97年12月から98年1月頃には離婚を考えていたとも、松永は嘯いていたようだ。弁護士は質疑応答のなかで答える。

「隆也さんは『緒方家に騙された』、と。智恵子さんは遊びまわっており、緒方家から(跡取りとして)土地などの財産も貰えなかったことなど、緒方家にいい感情を持っていなかったという。あとは性格も合わなかった」

 まさに“死人に口なし”といえる状況に乗じた、松永発の検証不可能な説明が続く。

 この会見では、智恵子さん事件だけでなく、5日前に起訴された広田由紀夫さん事件についても、質疑応答で触れられた。

 記者から由紀夫さん事件の起訴状にある、“木製の囲い”について問われた弁護士は、まず次のように説明する。

「起訴状にある“木製の囲い”は、単なるイジメ的要素だったのでは……。すのこを組み立てて作ったもの。それを松永さんは“領土”と呼んでいたそうです」

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