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連載完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件

“死体なき殺人事件” 北九州監禁連続殺人事件の捜査はなぜ難航したのか

完全版ドキュメント・北九州監禁連続殺人事件 #28

2020/10/06

genre : ニュース, 社会

「写真の由紀夫さんはたしかに痩せています」

 続いて、殺害の時期について「96年(平成8年)1月(上旬)頃からとあるのは?」と記者から尋ねられた弁護士は、以下の答えを返している。

「その頃の写真があるからでは……。調べのなかで松永さんは、2枚の写真を見せられたそうです。1枚目は95年(平成7年)2月頃撮影で、由紀夫さんが酒を飲んでいる写真。『片野マンション』で由紀夫さんを撮影したもので、顔も血色が良くて、酒を飲んで真っ赤で恰幅もいい。一方、2枚目の写真は96年1月上旬頃の写真で、『片野マンション』でA君(松永と緒方の長男)を撮影したもの。誕生日祝い? それはわからない。この写真はA君の前にカズノコが写っており、正月にでも撮影されたものじゃないでしょうか。A君の後方に由紀夫さんと少女(広田清美さん=仮名)が写っている。その由紀夫さんが“領土”に“ゲタ(スリッパ代わりの段ボール)”を履いて、しゃがんだ姿勢で写っていた。由紀夫さんの両腕に5、6か所のなんらかの痕があり、それが起訴状の“痒疹”ということなのだろう。松永さんによれば、その痕はペンチでひねったり、あるいはクリップの痕で、主に5割は少女がやったもので、なかには松永さんがやったものもあるそうです。少女は、由紀夫さんの体を噛んでいたこともあるので……」

©️iStock.com

 さらに弁護士は付け加える。

「松永さんは、勾留理由開示公判の日の調べのなかで、この写真を見せられ、『衰弱だと言え』と言われたそうです」

 ただし、2枚目の写真に写る由紀夫さんの体が、起訴状にあるように痩せ細っていたことについては、弁護士も認めている。

「2枚目の写真の由紀夫さんはたしかに痩せています。また、顔のほほや眉毛に黒い痣もあり、松永さんによると、通電やクリップを挟んだ痕かもしれない、と……」

 死体が残された殺人事件であれば、法医学的な検証もある程度は可能である。だが、“死体なき殺人事件”には、こうした言い逃れの余地が生じてしまう。そこにこの事件の捜査の難しさが表れていた。

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